先月末、大阪のストリップ劇場「十三ミュージック」が風営法違反の疑いで摘発された。劇場内の個室で踊り子たちにヘルスサービスをさせていたという。
「ストリップ劇場の摘発自体は別にめずらしいことではありません。言うなれば警察の恒例行事。その場合、罪状は“公然わいせつ”が多いのですが」(夕刊紙記者)
劇場内の個室でのヘルスサービスは、東京あるいは関東の劇場でも25年くらい前までは普通にあった。劇場が出し物のハードさを競い、観客を舞台に上げて本番をする「生板ショー」があった時代の話だ。しかし、取り締まりが厳しくなったこともあって、ストリップ劇場は今日まで健全化してきた。それだけに、十三ミュージックの一件は、ストリップの栄枯盛衰をフラッシュバックさせる出来事だった。
老舗劇場の閉館や観客の高齢化など、イマイチ明るい話題が少ない昨今のストリップ業界だが、実際はどうなのか。前出の夕刊紙記者はこう話す。
「全国的にみると、昨年は『ナニワミュージック』や『諏訪フランス座』が閉館するなど、劇場の数が減っているのは確か。コアなファンが高齢化しているのも事実ですが、ストリッパーに転向するAV女優は相変わらず多く、しかも、小澤マリアのようなクラスの女優までステージに上がっています」
『MUTEKI』レーベル第1弾女優の三枝美央は一昨年に浅草ロック座でデビューしているし、ここ数年で業界最大の話題は何とっても、小向美奈子のデビューであろう。ただ、小向の場合、観客がもっとも見たいアソコをご開帳しないので、ややイレギュラーな感じがするが、それでもあの大騒ぎだ。彼女がストリップ業界の新しいファン層掘り起しに一役買ったのは間違いない。風俗情報サイト『MAN-ZOKU』の丹田編集長はそうしたトレンドをこう分析する。
「“会いに行けるAV女優”ということで、その女優の若いファンが劇場に足を運ぶという流れはありますね。ストリップは見るだけのヌキなし風俗ですが、草食系が増えている最近の風潮にも奇妙に適合します。モザイクの向こう側を見ることができるというのは、いつの時代になっても、ファンにはうれしいものです」
AV女優の中には、ヘルスやソープなどのフーゾクで働くようになる子もたくさんいるが、フーゾクに抵抗感のある子がストリッパーになるケースが多いと聞いたことがある。また、そういう子は、アーティストとして何かを表現するのが好きらしい。一度、ステージにのって観客の生の視線を浴びると、病みつきになってしまうのだそうだ。
AV女優出身の踊り子が多い劇場としてはロック座グループが有名だが、普通の素人をストリッパーに育てるケースもまだまだ健在だ。新宿・歌舞伎町TSミュージックの岡野健太郎社長に話を聞いた。
「素人の女の子でストリッパーになる子は結構いますよ。まあ、やめる子も多いけど(笑)。最近はAKBやももクロなどのアイドルブームなので、アイドル路線の出し物が人気です。客の入りは昔に比べて大きくは変わってないけど、尖閣以来、中国人観光客のお客さんが減ったのは痛いね。池袋は影響ないみたいだけど、新宿は減ったよ」
この業界にも尖閣問題が影を落としているとは……。しかしながら取材をしてみると、昔の勢いは見られないものの、ストリップは風俗業界の中で意外に健闘しているのである。
(文=上条泡介)