10月に入り、いよいよ新番組のスタートする時期がやってきた。記者独自の調べによると、10月1日から31日の間に始まる民放5局によるゴールデンタイムから深夜帯にかけての新番組の総数は90プログラムで、そのうちバラエティは37番組だった。特に新番組に力を入れているのは、TBSで、新番組の総数は22(内バラエティ11)と、各局平均18プログラム程度の中で唯一20を数えている。新バラエティの数が2桁になっているのもTBSのみだった。
しかし、そんなTBSも、新バラエティのほとんどは深夜帯のものが半数以上。今回の改編は、あくまでも試験的な番組編成という姿勢に違いない。もしくは、ここから人気番組でも出てくれたらいいな、という希望的観測の強い編成といえるだろう。だが、今期の番組改編で、強気なのか、ただの迷走なのか、大胆な編成を組んできた局がある。それがフジテレビだ。
秋の番組改編でフジテレビが投じるゴールデンタイムから深夜帯にかけての新番組の数は16。この数はテレビ朝日と並んで民放5局中もっとも少ないのだが、深夜12時までのバラエティに限れば8番組と、5局中もっとも多い数になる。特に11時台では、平日放送分がすべて新番組という布陣を敷く。同じ数の番組をスタートさせるテレビ朝日が、ゴールデンタイムからプライムタイムにかけて新番組をまったく開始しないのとはワケが違う。
「フジテレビとすれば、やはり視聴率競争で遅れをとっているという危機感があるんでしょうね。特にバラエティという分野は自分たちが開拓してきて、これまで成長させてきたという自負がある局ですから、そこで負けるのは相当悔しいはずです。“楽しくなければテレビじゃない”というのがスローガンの局ですからね。今回の新番組を見ると、まさに“バラエティのフジ”を復権しようとしているのではないでしょうか。『テラスハウス』『オデッサの階段』『世界は言葉でできている』など、ドキュメンタリータッチのバラエティで新しいジャンルを開拓しようとしているように思えます。まあ、『ほこ×たて』という番組の流れではあると思いますがね。ともかく、芸人のトークが主流となっている今のバラエティの流れを変えようとしているのではないでしょうか。それが成功すればまた新しい“バラエティのフジ”になれるわけですから」(業界関係者)
年内で終了することが決まった『HEY!HEY!HEY!』や先日終わりを告げた『はねるのトびら』などに見られるように、フジテレビが何かを変えようとしているのはよくわかる。もちろんこれらの番組の終了は単に視聴率の低迷ということなのかもしれない。
「確かに『はねるのトびら』は最終回スペシャルでも平均6%程度しか視聴率が獲れずジリ貧でしたよね。ただ、そんな数字以上に影響力が大きかったのがネットでの評判とも言われてます。特に生活保護問題の梶原や、ネットユーザーにすこぶる嫌われている西野というキングコングの2人の悪影響はかなりあったんではないでしょうかね。ネット販売が主流になりつつ今では、スポンサーもネットユーザーの反応を過剰に気にするようになってきていますし、苦情やクレームが入れば、すぐ番組に抗議しますから。ネットの評判と視聴率というのがどこまで密接に結びついているかは不明ですが、そうした影響も少なからずあったでしょう」(前出)
韓流偏重放送局として批判されたフジテレビの番組で、もっとも韓流寄りだとバッシングを受けたのが『HEY!HEY!HEY!』でもあった。視聴率の低迷に加え、そうした影響が18年続いた番組を終了に追い込んだのではないかとこの関係者は語る。確かにフジテレビというテレビ局は、ネット上での評判がすこぶる悪い。ただの言いがかりともいえるような批判や非難が後を絶たない始末だ。先日も『とくダネ』における小倉智昭の自民党安倍新総裁に対する発言が、ネット上で問題視されて番組途中で謝罪したという経緯があった。そもそも権威や権力に対して批判的な立場であるべきはずのメディアが、政治家を揶揄したくらいで問題になる必要はない。安倍のわずらった「潰瘍性大腸炎」という病気に対しての不見識や同じ病気で苦しむ人に失礼だという批判があるが、小倉とすればそんなこと頭にもないに違いない。あくまでも、1年足らずで辞任した安倍への、もし今度首相になったら死に気でやってくれという批評であったはずだ。にも関わらず小倉はわざわざ謝罪をする。そんな小倉も情けないが、いちいち謝罪させる番組も情けない。小倉こそ言葉に責任を持ち、謝罪するくらいなら降板すればいいのだ。
前出の関係者は、芸人のトーク主体というバラエティを作り上げたテレビ朝日に対するフジテレビの反撃として今期のフジテレビの番組改編を評価している。確かにその通りであれば、きっとフジテレビの未来は明るいだろう。しかし、もしそれが少しでもネットユーザーに好かれたいというような気持ちからだとしたら、今後大して面白い番組は生まれないに違いない。ネットの声など気にせず、とにかく面白いものを作ればいいのだ。スポンサーなどの現実問題があるとはいえ、面白ければそもそもネットで叩かれることはないのだから。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
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