明治25年(1892年)といえば、9月には長崎で駐留イギリス人商社マンがカネを払って日本人の売春婦に犬とセックスさせた事件が起きていることは、以前、本サイトでも記事にしたことがある。
(※https://www.menscyzo.com/2010/07/post_1564.html)
その事件の発覚から1カ月ほど経った同年10月25日午前9時30分頃のこと。東京の京橋区木挽町(現・中央区銀座)を流れる川で、警察の警ら船が漂流している水死体を発見した。警官たちがただちに遺体を引き上げて調べてみると、推定で50代半ばの女性で、着物は羽織まで調えられており、きちんとした身なりであった。そして、目には手拭いで目隠しがされ、女性にもかかわらず下着にふんどしが締めてあった。これについて新聞記事は、死後に醜態を露わにしないようにとの配慮であるとして、覚悟の自殺ではないかという論調で紹介している。
さて、奇妙なことに遺体は、何かを包んだ黒ちりめんでできた袱紗(ふくさ)を、右手にしっかりと抱きかかえていた。警官がそれを解くと、なかから犬の死骸が現れた。犬の種類はよくわからないが、洋犬でしかもかなり高級そうな犬だったらしい。
当時、実況見分はその場で行われ、現在のようにシートなどで覆い隠すこともなかったらしい。その事件が起きた場所にはかなりの通行人がいたため、現場はたちまち人だかりとなり、遺体確認は野次馬たちが見守る中で行われた。そして、犬の遺骸が現れたとたん、見物人たちは「犬と心中したんだ!」「いや、愛犬が病死したので嘆きのあまり自殺したに違いない!」などと、口々に騒ぎ立てたと、新聞の記事は伝えている。
ちなみに、「獣姦」についての事件や怪しげなウワサは戦前だけでもいくつか見つかる。明治7年、熊谷県前橋(現・群馬県前橋)の養豚場で、「人と豚の混血児が生まれた」とのウワサが流れた。仮に人間と豚がセックスしても生物学的に受精することはありえないので、まったくのデマ。明治35年には、神戸で駐留外国人が自分の飼っている愛犬にレイプされたとの報道がされている。さらに昭和2年3月、山口県下関である女性が自殺を図ったが、その理由が「飼っていたヘビが死んでしまったため」。実はその女性、愛犬ならぬ愛蛇を使ってオナニーにふけっていたとか、いなかったとか。
(文=橋本玉泉)