ひと昔前までは、男性がオナニーをするのは精子が溜まるという身体の構造上当たり前だが、女性はオナニーしない人がほとんどである、という認識だった。というよりも、女性のオナニーという話題自体がタブー視されていたのだろう。
しかし時は流れて21世紀、男性だけでなく女性も、性に対して開放的な時代となり、様々な媒体で女性のオナニーの過激な有様が紹介されている。バイブレーターやディルドなどアダルトグッズの類のみならず、野菜や雑貨などの異物挿入やアナル刺激など、実にバリエーション豊か。オカズに関しても、レディースコミックや官能小説にとどまらず、イケメンAV男優が出演する女性向けアダルトビデオの需要も伸びているようだ。
こういった流れを受けて、男性は「女性はオナニーに対して貪欲な生き物である」というイメージを持ってしまうが、様々なオナニーバリエーションの中で、意外に少数派なのが、「オナニーでオッパイを揉む女性」である。いや、少数派というよりも、限りなくゼロに近いといっていいだろう。そう、女性たちはオナニー時にオッパイを揉まないのだ。
にわかに信じがたいという男性がほとんどだろう。アダルトビデオやピンク映画、成人向け漫画で描写される女性のオナニーシーンは、必ずといっていいほど、オッパイを揉んでいるものである。片手でオッパイを揉み、もう片方の手で下半身を刺激するというパターンがもっとも多い。
だが一般女性に聞くと、「オッパイを揉んでも気持ち良くないから揉まない」と口を揃える。なるほど、だとしたらセックス時もオッパイは揉まないほうがいいのだろうか？
その点に関しては、全くの別物という答えが返ってきた。オッパイとは、自分自身で揉んでも気持ち良くもなんともないが、第三者に揉まれるぶんにはたいそう気持ち良い部位であるとのこと。
一見、理解しがたい主張にも感じるが、これはおそらく、脳が「揉まれている」というオッパイの意識よりも、「揉んでいる」という手の意識のほうを強く察知してしまうため、自分自身で揉んでも気持ち良くないという思考回路に至るのだろう。そういえば、自分でワキの下をくすぐっても、ちっともくすぐったくない。それと同じということか。
以上を踏まえると、オッパイで性感を得るには、第三者のアシストなしには成り立たないということになる。ならば、セックス時にオッパイを念入りに揉むことによって、女性からの評価はおのずと上がり、「○○君とのセックスは気持ち良い」と判断してもらえるだろう。そもそも女性とは、自分ではできないことができる男性に魅力を感じる傾向が強い。高いところの電球を替えたり、かたいペットボトルのフタをあけたりすることで「○○君ってすごい！」という認識になるのだから、オッパイでの性感を与えることは必ずやプラスになるはずだ。
逆に、セックス時にタブーなのが、女性に対して「自分でオッパイを揉んで」というリクエストである。挿入時、特に体位が騎乗位の体勢において、上記のセリフをつい口走ってしまう男性も見受けられるが、これは野暮というもの。性器同士がつながった状態で、女性が自らの乳房を鷲掴む姿は最高のパノラマだが、女性にとってはムダ極まりない行動なのである。騎乗位に至っても、「自分でオッパイを揉んで」というセリフを封印することで、これまた女性からの評価は上がるはずである。
セックスというと、主役はなんといっても下半身である。それは覆しようのない事実だが、下半身のことばかりに躍起になり、オッパイ揉みをおざなりにしてしまうと、「物足りないセックスをするつまらないオトコ」とジャッジされかねない。ダイレクトで下半身に飛びつきたい気持ちをあえて抑え、オッパイ揉みに重点を置くオトコこそが、真のセックス紳士といえるだろう。
（文＝菊池 美佳子）