NHK職員も吸った「脱法ハーブ」メディア報道が使用者を増やす?

※イメージ画像 photo by Treasach from flickr

 今月3日、NHKの福岡放送局のディレクター(26)と宮崎放送局のディレクター(27)が福岡市内で脱法ハーブを吸引し、意識もうろうとなって救急搬送される騒動があった。新聞や雑誌で脱法ハーブの危険性が盛んに取り上げられるようになり、同局でも6月に『クローズアップ現代』で脱法ハーブ問題を特集したばかり。警察に事情を聴かれた二人は「吸ったのは初めて」「単なる好奇心だった」と話しているという。

「二人は酒を飲みながら脱法ハーブについて話しているうちに『吸ってみよう』ということになった。福岡市内の脱法ハーブ店に行ったが、勝手が分からずに吸引具だけを購入し、福岡放送のディレクター宅に戻った時に肝心のハーブがないことに気付いた。そこで二人は諦めずに、ハーブのデリバリーショップに数千円を払って届けてもらい、福岡放送のディレクターが2服、宮崎放送のディレクターが3服したところで気分が悪くなった」(NHK関係者)

 すべてにおいてお粗末な話だが、この件に限らず最近は脱法ハーブ吸引後に体調を崩して搬送されたり、死亡する事故が相次いでいる。

 合成ハーブとは、化学的に合成した麻薬に似た成分をハーブ系の植物に吹き付けたもの。大麻の代替品として認識されていることが多いが、大麻のようないわゆるナチュラル系ではなく、完全なケミカルドラッグである。吹き付ける成分によって効果が違うため、アッパー系からダウナー系まであり、精神的高揚だけでなくセックスの快感を増幅させる効果があるものも存在する。

 数年前から出回り始めた脱法ハーブは、当初はクラブ遊びが好きな人々など一部で愛好されているだけだった。しかし、最近の報道や公的機関の注意喚起などが逆効果となり、一般層にまで浸透しているようだ。

「テレビで脱法ハーブ問題が特集されると、その直後に間違いなく注文が増えます。興味がなかった人まで『そんなに凄いのに法に触れないならやってみたい』という興味本位で買いにきます。以前は決まった客だけを相手にした小さい市場でしたが、最近はメディア報道のおかげで新規客が増えて正直儲かっていますね」(脱法ハーブ業者)

 当局も危険性を十分に認識しており、これまで幾度も薬事法によって規制をしてきた。だが、ハーブ製造側は化学構造式を微妙に変えた新種で法をすり抜け、イタチごっこの状態が続いている。今月も新たな規制が実施されたが、すでに規制をかわす「第6世代」と呼ばれる新種が出回っているようだ。

 数年前からハーブの危険性に注目していた筆者からすると、死亡事故が相次いでいることが最も気になる。もともとハーブは、大麻の代替品として医療目的で製造された「合成カンナビノイド」を主成分としていた。語弊があるかもしれないが、医療目的で使われていたくらいなのだから、余程の乱用をしない限りは死に至るほどの危険性はなかったはずである。使用者が増加しているとはいえ、ここまで事故が頻発するのはナゼだろうか。

「規制を受けた業者側は効果の落ちない新商品を開発しようとして、法規制されていない効果の強い成分を混ぜるようになった。強くキマれば何でもありという姿勢で作っているから、人体に有害な成分も含まれている。それが度重なる規制で何度も繰り返され、もはや最初のハーブとは全く別物になった。販売している側も、今のハーブに何が入っているのか完全には把握せずに売っている」(前同)

 法的な規制をすればするほど、脱法ハーブに危険な成分が増えていくという逆効果が生まれているといえる。メディア報道がハーブ使用者を増やし、中途半端な規制が死亡事故を生み出すという悪循環が続いているようだ。

 メディアは単に「ハーブは恐ろしいもの」というイメージのみの報道をするのではなく、なぜ危険なのかをもっと周知させるべきだろう。厚労省も間に合わせのような規制ではなく、抜本的な解決策を一刻も早く打ち出すべきである。事態打開のため、厚労省は化学的に基本構造が似た麻薬成分をまとめて禁止する「包括指定」の導入を検討しているが、果たして業者を一網打尽にする決定打となるのだろうか。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

men'sオススメ記事

men's人気記事ランキング

men's特選アーカイブ