その名の通り、見かけは小さな旅館だが、実は本番風俗店というのが“一発屋旅館”や“ちょんの間旅館”と呼ばれるものだ。旅館なので当然、個室があり、布団があり、風呂にシャワーと、風俗に必要なものは全て揃っている、まさにうってつけの“箱”である。
弘前から石垣島まで全国約14カ所の地域に点在しているが、多くの人が最も興味があるのは、どんなふうな旅館でどんな女のコがいるのか、その体裁と女のコのレベルだろう。
簡単に言えば、大阪の新地にあるちょんの間が“料亭”なのに対し、こちらは旅館になっているだけ。民家や民宿風のものから、温泉街の小さな旅館や個人経営のビジネスホテルタイプと様々。残念ながら女のコの顔見せはない。
一発屋旅館が最も多いのは、歓楽温泉として名高い石川県山代温泉だろう。温泉街からひと山超えた集落には、シーズン中には多数の温泉客がまかなえるよう、『○○旅館』と看板の出ている一発屋旅館が多数ある。
夜になると、一発屋から乗り合いのワゴン車が出て、温泉街にある各旅館を回って志望者を乗せて戻ってくる。遊び終わった後は、またちゃんと旅館に送り届けてくれるのだが、夜中にワゴン車から浴衣を着た男たちがゾロゾロと小さな旅館に出入りする姿は異様だ。
「こんなところに!?」と驚かれるのが、『生駒新地』と呼ばれる一発屋旅館で、奈良の生駒山にある宝山寺へと続く参道の石段沿いに並んでいる。その佇まいは純和風建築のところもあり、定番となっている人妻系としっぽり遊ぶにはうってつけの雰囲気。2時間2万7,000円ほどだが、あらかじめ予約をしておけば宿泊も可能だ。本シリーズ第6回に詳細がある。
一発屋旅館は特定の地域に集まっていることが多いが、ソープ街で共存を図る旅館もある。東京・吉原や兵庫・福原、高知・堺町のソープ街では、深夜0時過ぎてひとっ風呂浴び損ねた客が立ち寄る最後の砦となっている。
お相手は残念ながらソープのお姉さんではなく、専門のデリから来る元ソープ嬢や人妻系が多い。
同じような旅館が集まっている高松市の琴電瓦町駅裏や石垣島の十八番街では、普通の旅館と間違えないように、玄関に赤い照明を点けているところもある。
女のコのレベルは地域差があるが、総じて年齢は高めと考えていいだろう。料金は生駒新地以外は30分1万5,000円程度。ちょんの間より少し長く、少し高い。
また、風俗とは知らない客が宿泊を求めて来た場合はどうするのか聞いたところ、富士吉田にかつてあった一発屋旅館の女将は「満室だと伝えて断る」と言っていたが、片山津温泉にあるビジネスホテルの旦那は、「部屋が空いていれば普通に泊める」と言った。
その違いは、そもそも風俗として造られたか宿泊施設として造られたかの設備や備品によるものと思われる。
ふいに遊びにいった温泉街で偶然泊まった旅館が一発屋だったら!? 遊ばないとしても男なら、少しワクワクしてしまう。
【一発屋旅館のある街】
県/地域/女のコ年齢
青森/弘前市紙漉町/20代~30代
東京/吉原ソープ街/20代~30代
岐阜/下呂温泉/20代~30代
石川/片山津温泉・山代温泉/20代~30代
奈良/宝山寺参道/30代~40代
兵庫/福原ソープ街/20代~30代
愛媛/松山市千舟町/20代~30代
香川/高松市瓦町駅周辺/20代~30代
高知/堺町ソープ街/30代~40代
福岡/久留米市花畑駅周辺/20代~30代
鹿児島/甲突町ソープ街周辺/20代~30代
沖縄/宮古島イーザト/40代
沖縄/石垣島十八番街/30代
(写真・文=松本雷太/著書『超おいし~日本全国フーゾクの旅』宝島社)
【ニッポンの裏風俗 バックナンバー】
第1回 昭和初期にトリップしたかのような街並み、大阪・飛田新地
第2回 顔見せが無くても人気の新地…大阪五大新地
第3回 政治に翻弄された沖縄風俗
第4回 四国裏風俗ルポ 香川・徳島・高知
第5回 四国裏風俗ルポ・松山
第6回 生駒新地
第7回 全国のポン引き地帯
第8回 本サロ、本ヘル
第9回 温泉コンパニオン
第10回 お手頃料金で遊べる温泉風俗
第11回 連れ出しスナック
第12回 アングラな風俗街として認知されてきた青線
第13回 アジアン風俗~二極分化する中国エステ~