戦前の大新聞、すなわち「朝日」や「毎日」、「読売」といった各紙には、今日では考えられないようなアダルト系の広告が満載だった。そのなかには、工夫を凝らしたというか、なんとも奇想天外なものが少なくない。
たとえば、「東京朝日新聞」昭和2年5月15日版に掲載されていた広告は、そのタイトルが「生殖器と男一代の運勢」である。
その内容を読んでみると、「人相を見抜く奥義は顔よりも生殖器を見よ」というフレーズが目を引く。つまり、男の人生や性格は、男性性器に歴然と現れるものだと強調しているのだ。その際、水野南北という人物が紹介されており、その「男を見抜くには生殖器を見よ」という説も南北の遺した「秘伝の珍書」によるものだとしている。
この水野南北とは江戸中期に活躍した占い師で、それなりに名の知れた人物である。その著書も、国会図書館などに所蔵されており、現在でも読むことができる。ところが、その「秘伝の珍書」がどの文献を指すのか、明確な書名がまったく記されていない。
だが広告では続けて、その珍書には「生殖器が発育不良短小で萎縮して活力のない様な男は、勇気も乏しく胆力も小さく、脳力智力も人に後れ、到底大事業は一生出来ない、未来の運勢も向上発展せず且短命の相」などと書かれてあると説明している。まるで性器が小さいというだけで、酷い言われ方である。しかも、この説は当時のヨーロッパの医学界での研究報告にも一致しているなどという有様。もちろん、その根拠となる学説なるものはあやふやであって、何ともいい加減な雰囲気が漂うものである。
そうした説明をした上で、「真空水治療法器」なるグッズが登場。要はペニス増大器で、ここでまた海綿体の血行増進とか、あたかも医学的に効果がありそうな文言を並べた上で、「弱小もズンズン強大になり」と、すなわち巨根になること間違いナシで、しかもそれによって「脳力までも明快になり記憶力も増大」するというのだから、なんともありがたいグッズである。
要するに、ペニスが大きくなるといいことばかりなのだから、是非ともこの「真空水治療法器」を買いなさい、という趣旨の広告である。ではこの「真空水治療法器」は販売価格はいくらなのかと興味がわくところだが、広告はカタログ請求までであって、残念ながら詳細は不明である。
内容だけ見てみると、70年代から90年代まで数多く発行されていた実話誌に大量に載っていたアダルト広告と非常に似ていることがわかる。権威や著名人による箔付けや、男性のコンプレックスを刺激する表現と過大な「効果」をうたう文章など、その後のアダルト広告にほとんど共通するものばかりである。70年代から現代まで続くB級アダルト広告の萌芽は、すでに戦前の大新聞で実現されていたと言っても過言ではあるまい。
(文=橋本玉泉)
『世界一と世界二のチ●ポに薬漬けされて白目むくまでガン突きFUCK!!! 笠木忍』
やっぱり男優の鼻は高いのでしょうか?