アダルトビデオは、あくまでもエンターテイメントであって、セックスの教科書ではない! ということは百も承知だが、多少なりとも影響を受けてしまうのが人間というものである。イラマチオ・アナルファック・顔射などの過激な行為に触発される者も多いだろう。また、それら具体的プレイのほかにも、名器に対する価値観に関しても、少なからず影響されているのではないだろうか。
アダルトビデオでは、女性器に対して「締まる」「狭い」「きつい」などが褒め言葉として多用されている。そして、そういったセリフは女性を悦ばせる、と認識した男性たちは、実際のセックスにおいても、女性に対する褒め言葉として「すごい締まるね」「痛いくらいだよ」とささやく。そのため、女性たちは「締まりの良い性器こそ、イイ女の証!」と判断し、最近では「膣トレーニング」など、膣圧を鍛える女性たちも急増しているという。
ここで、膣トレーニングの方法にも少し触れておこう。以前、「股間トレーニングにオトコもオンナも無我夢中!?」(※1)という記事でも紹介させていただいたが、排尿時、意図的に尿を止めたり、膣バーベルなどのグッズを挿入するなど、各々が工夫を施しているようだ。女性誌でも膣トレーニングの特集が多く組まれ、膣を刺激することによって、膣が鍛えられ、締まりが良くなるという理論である。(※1)『股間トレーニングにオトコもオンナも無我夢中!?』
このように、涙ぐましい努力を積み重ねている女性たちには申し訳ないが、男性陣からは「実はユルい膣のほうが好きだ」という声も挙がっている。「名器=締まりの良いキツい膣」という定説に反する意見であるが、ユルい膣を好む男性たちには、どのような事情が隠されているのだろうか?
まずは、「膣が好きだからこそ、ユルい膣が好き」という声。オッパイよりもクリトリスよりも、とにかく膣が好きとのこと。好きだからこそ、そこに長く滞在したいと願うのは当然である。しかし、締まりのいい膣だとあっという間に射精してしまい、大好きな膣を楽しめない。「つまり、早漏ということか?」という問いに対しては、否定できないとのことだった。もちろん、早漏でも締まりの良い膣が好きで、三こすり半に全力投球するという人もいるだろうが、相手女性の満足度も考えると、膣がユルい女性のほうが、「早漏で申し訳ない」という後ろめたさを感じないので良いようだ。
次に、「ユルい膣に安心感を覚える」という男性もいた。安心感といっても、前述の「早漏を気にせずできる安心感」とは全く違うようだ。詳しく聞いてみると、「ぬるま湯に浸かっているような感覚がたまらない」のだという。確かに、風呂にたとえると分かりやすいかもしれない。熱い風呂のほうが刺激的で良いという人もいれば、ぬるめのお湯でまったり楽しみたいという人もいるだろう。さらにマニアックな意見としては、「胎内回帰願望も挙がった。私たち人間は、膣から産まれている。その膣に再び包まれることで安心感を得るのだという。締まりの良い膣では、刺激ばかりが強すぎて、安心感どころではないとのことだった。
なお、ユルい膣を支持するうえで、不都合なこともあるのだという。それは、「(女性を)褒めたいのに褒められない」というジレンマ。なにぶん、「膣がユルい=女性にとっては失礼にあたる言葉」というのが定説となっているため、「ユルい膣が好きな俺にとっては、キミのユルさは最高だよ!」と言えない口惜しさがあるようだ。確かに、本心から出ている言葉だとしても、ほとんどの女性は不快感を抱くであろう。こればっかりは、賞賛したい気持ちをおさえたほうが無難である。どうしても膣を褒めたいという人は、「ユルい」という具体的な表現は封印して、「気持ち良い膣だね」など、いかようにも解釈できる言葉を選ぶことをお薦めしたい。
ところで、膣の締まり具合を、見た目から判断する方法はあるのだろうか? 「足首が細い女性は締まりが良い」「口が大きい女性は膣も大きい」など諸説飛び交っているが、どれも真偽のほどは定かではない。また、セックス経験の少ない若い女性は締まりが良く、セックス経験豊富な熟女は膣がユルいというイメージが強いが、必ずしもそうではないようだ。男性のペニスサイズを、外見から判断できないのと同じである。
結論として、締まりの良い膣でもユルい膣でも、膣であることに変わりはない。どちらのクジを引いても、ありがたくいただくのが真のセックス紳士である。とはいえ、昨今はあまりにも「キツマン至上主義」が横行している風潮にあるのだから、ユルい膣を支持する声がもっと広まっても良いだろう。価値観の多様化が著しい現代社会において、キツマンばかりが注目されるのはある意味不可解である。ユルマン支持者は、是非とも己の主張を、世間に向けて発信していただきたいものだ。
(文=菊池 美佳子)