ファンも無関係ではない?

自殺・パンチドランカー・リング死・ギャラ未払い…格闘技残酷物語

※イメージ画像 photo by Verlage Photo from flickr

 “豪腕”で知られた格闘技K‐1の元トップファイター、マイク・ベルナルド(享年42)が2月14日(日本時間15日)に母国・南アフリカ共和国のケープタウンで死去した。薬物を大量に摂取しており、自殺だったと見られている。自殺の動機ははっきりしていないが、数年前からパンチドランカー症状やうつ病に苦しんでいたことや、何度も自殺未遂を図っていたことが関係者によって明かされている。

 業界関係者やファンの間では、観客を熱狂させたK‐1での壮絶な殴り合いが彼に深刻なダメージを与え、結果的に精神まで侵されてしまったのではないかと推測されている。

 また先日、”PRIDEの番人”といわれた元格闘家ゲーリー・グッドリッジ(46)が、初期の慢性外傷性脳症であることを公表。これは一般的にパンチドランカー症状といわれるものであり、彼は現役中から深刻な記憶障害に悩まされていた。グッドリッジは「私は自分の生き方を愛している。後悔はしていない」としながらも、「ダメージはK‐1の試合によるものだと思う。総合格闘技では頭部にハードな打撃は受けていないから問題はなかった。K‐1では何度も頭部を負傷した」とコメントしている。

 K‐1創成期の立役者である佐竹雅昭(46)も、パンチドランカー症状に蝕まれた選手の一人。現役中から日常生活が困難になるほどの深刻な症状が現れ、医師にアルツハイマーの危険性を指摘された。佐竹は激しい打撃を受けただけでなく、2002年のPRIDEの試合で危険な投げ技によって頭部を負傷し、開頭手術を受けたこともあった。

 また、K‐1を運営していた正道会館の有望株だった植田修(享年22)が、1994年に行われたキックボクシングの試合中に不慮の事故で死亡した事件もあった。頭部を殴り合う格闘技では深刻な後遺症だけでなく、リング禍と呼ばれる死亡事件も後を絶たない。

 ファンを魅了する選手は「勝っても負けてもKO」というタイプが多く、それゆえにダメージが蓄積されていき、後年になって深刻なダメージが露呈する。100キロ超のヘビー級同士がガチンコの殴り合いをすれば、タダでは済まないのは誰にでも分かる道理だ。華やかだった格闘技ブームの隠れた暗黒面が、今になって露呈してきたといえる。それだけでなく、急激に隆盛した格闘技界の問題点も関係している。

「K‐1をはじめとした格闘技は、スポーツというよりも『興行』の面が強い。ファンを引き寄せるためにKO試合を連発しようとして、選手にあまりガードをしないように指示していたこともあった。他の歴史あるスポーツと違って選手を守る組織体系もしっかりしていないため、メディカルチェックやドクターストップの基準がいい加減だったことも事実。小規模な大会になると、血液検査や脳のスキャンもやらないところがあるが、生活がかかっている選手は出場せざるを得ない。興行主である格闘技団体は、選手の命を削って金に換えているともいえる」(格闘技関係者)

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