【ニッポンの裏風俗】四国裏風俗ルポ 香川・徳島・高知

高松市城東町にある巨大な風俗ビル(photo=Raita MATSUMOTO 転用厳禁)

 東京が寒波の影響で雪に埋め尽くされた1月下旬、取材で四国にいた。日本列島を襲った寒波はまた、南国であるはずの四国にも雪を舞い散らせた。

 他県の人間が四国の裏風俗と聞いて、地名や風俗街の名称が頭に浮かぶなら、かなりの風俗通と言ってよい。それほど四国の風俗は一般には知られていないが、しかし、四国四県の県庁所在地にはいずれも元赤線街や風俗街があり、表風俗から裏風俗まで夜の街が残っているのだ。

 香川県高松市、高松城跡の東側に位置する城東町は、三方を海に囲まれた小さな岬の街である。かつて遊郭の街であった場所に、現在はソープランドやファッションヘルスが並んでいる。裏風俗街も当然その付近かと思いきや、あるのはそこから南に歩いた琴電瓦町駅付近だった。

 瓦町駅前は、駅を境に表と裏で街の表情が大きく異なる。表側はアーケードの続く繁華街や歓楽街だが、裏に廻ると表情は一変して静かな街が広がっている。そこには、お遍路さんたちが利用するための安旅館が並んでいるのだが、その中にちょんの間旅館がまぎれているのだ。料金は20分1万円、三十路~四十路の人妻系とひとときの逢瀬を楽しめる静かな空間である。数年前にはJR高松駅付近にもちょんの間旅館が一軒あったが、現在はオシャレなカフェへと劇的に変身していた。

 ”泡おどり”ならぬ”阿波おどり”で有名な徳島県徳島市。ここには、数少ない顔見せのあるちょんの間が残っている。

 眉山の麓にある歓楽街・栄町のソープやヘルスの並ぶにぎやかな路地を真っすぐ南に下ると、ものの3分で真っ暗な市街地へと変わる。はたして道を間違えたのか、と思えるほど暗い地をさらに歩くこと約5分。大きな公園を過ぎた先に、暗く光る裸電球の赤い光が見えてくる。にぎやかな大阪の飛田新地とは全く別ものの、電灯の下50センチまで近寄らないと女のコの顔が判別つかないほど暗いちょんの間街がそこに残っているのだ。

 元遊郭街だったその街を訪れるのは3年ぶり。以前は民家のガレージ内にイスを出して人妻系が座っていたり、駐車場に立っているお姉さんたちもいたが、今回は平日のせいなのか規制が厳しくなったのか、オバちゃんたちがうちわをパンパン叩いて客寄せする音も聞こえない、行儀のいい街になっていた。

 開いていた店は8軒、女性は20代から30代までの10人程度である。オバちゃんに呼ばれるまま、近づいて女のコの顔をよく見ると、暗いちょんの間の印象とは逆に美女が多い。1万円で手軽に遊べるコストパフォーマンスの高い穴場ちょんの間というプロフィールは、以前と変ってはいなかった。

 龍馬の里・高知市には、ふたつのちょんの間街が残っている。ひとつは明治時代に築かれた玉水遊郭跡地。そしてもうひとつは、はりまや橋にもほど近い、現在はソープ街となっている堺町の旅館街である。

 玉水遊郭は昭和初期には27軒の鼓楼(ころう)と200人以上の公娼で栄え、戦災にも遭わずに、現在まで生きながらえてきた街である。しかし、古い街ゆえににぎやかさは微塵もなく、夜になると、さらに暗さが染み渡る遊郭街跡地となっている。

 幅広の用水路や壁のような段差のある道路、かつての遊郭がそのまま現在に取り残されたかのようないにしえの建築物とで、そこだけが近代化から忘れ去られたような重苦しい雰囲気を漂わせている。

 路地を歩いていると、旅館の引き戸から顔をのぞかせたバアさんが声をかけて来た。

「遊びかね、若いコおるき。8,000円」
「若いって何歳くらい?」

 バアさんは答えなかったが、たぶん「私より若い」という意味だったに違いない。ウワサでは、在籍するのは、街と同じように長い歴史を積み重ねた女性という話である。

 もう一カ所のちょんの間街・堺町は、玉水町よりは新しく赤線街として成立した街。現在はソープランドやファッションヘルスの並ぶ風俗街となっているが、歩いてみると、小さなビジネス旅館が並んでいることに気付く。外観に怪しさは皆無だが、数軒がちょんの間旅館となっている。

 顔見せをしてくれるところもあるが、記者の経験では20代の女のコは見たことがない。中肉中背の三十路系なら御の字というところだ。料金は1万5,000円程。ソープやヘルスに行けば同じ料金でもっと若いコと遊ぶことができるのに、わざわざ怪しい風俗に行ってしまう記者の様な変わり者も少なくない。複数のちょんの間旅館が残っているのがなによりの証拠である。

 次回は、四国一の観光地であり歓楽街である愛媛県松山市を巡る。
(文=松本雷太/著書『超おいし~日本全国フーゾクの旅』宝島社)

「City Heaven(シティヘブン)四国・中国版 2012年 03月号」

 
四国って美人度はどうなの?


【ニッポンの裏風俗 バックナンバー】
第1回 昭和初期にトリップしたかのような街並み、大阪・飛田新地
第2回 顔見せが無くても人気の新地…大阪五大新地
第3回 政治に翻弄された沖縄風俗

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