著：前川ヤスタカ／朝日新聞出版
AKBの姉妹グループで、海外進出の第一歩とされるJKT48（インドネシア）はまだチラッと見かけた程度。NMB48のメンバーなんて誰ひとり知らない。そもそもAKB48自体、顔と名前が一致するメンバーが3分の1にも及ばない……。という人はかなりの数にのぼると思うが、そんな中で現在メンバー募集中なのが『TYB48』だ。
こちらはAKBプロジェクトの一環ではなく、メンバーを募集しているのは六本木にある審美歯科「デンタルビューティーサロン PureCure」。その院長である増岡太郎氏（歯科医師）がプロデュースを担当する。
TYBの意味するところは「T」suke 「Y」ae 「B」a＝「付け八重歯」。PureCureで付け八重歯をあつらえた客が募集対象で、年齢不問、そして”男の娘（女装者、ニューハーフなど）も可”だという。付け八重歯というもの自体にまったく耳馴染みがなかったのだが、調べてみるとどうやら世の中は、静かな八重歯ブームのようだ。
八重歯ガールを略した”八重ガ”という言葉も生まれ、『八重歯ガール』（著：前川ヤスタカ／朝日新聞出版）なる本も昨年末にリリースされた。また、くしくもAKB48の板野友美も、静かなブームの盛り上げにひと役買っているらしい。
「板野は以前”八重歯がコンプレックスだ”といってました。他のメンバーよりもかなり女性ファンが多い彼女なんですが、その中から板野の八重歯に憧れて”付け八重歯を付けて握手会に来た女のコがいて驚いた”という目撃談が、板野本人から語られたことがあったんです。八重歯を褒められることが増えた板野は、矯正を思いとどまったらしいですよ。他にも沢尻エリカなどの八重歯がある人気芸能人に憧れて、付け八重歯をファッションとして楽しむ女のコが増えてるようですね」（芸能ライター）
アイドルシーンでは昔から、八重歯はおおむね肯定的に捉えられてきた。現在40歳以上の年齢に達している往年のアイドルとしては、石野真子、伊藤つかさ、河合奈保子、森尾由美など現在まで名を轟かせる大物アイドルがゴロゴロ。 おニャン子世代だと、渡辺満里奈、渡辺美奈代という”W渡辺”が程よい八重歯だった。モーニング娘。では辻・加護の2人が揃って八重歯だったが、やがて双方とも矯正した。思えば、八重歯を取ったのが不運の始まりだったのかも……。
最近でも、菅谷梨沙子（Berryz工房）、鈴木愛理（℃-ute）、早見あかり（元・ももいろクローバー）、南沢奈央……と、八重歯が魅力のひとつとなっているアイドルは枚挙にいとまがない状況。
板野友美は、AKBがモー娘。以来の大ブレイクを果たし、さらに加熱中という状況下にあるため、その八重歯までもが注目されたわけだが、八重歯に、しかも付け八重歯に特化した「TYB48」はどうか。「PureCure」HPにある募集のうたい文句によると.、
「活動期間は今年1年間、CD製作、秋葉原等でのライブ活動などを行っていきます！」
とのことで、極めてフツー……。しかし院長の増岡氏は、一見したところホストっぽい外見のとおり、異色を放っている。歯科関係以外でも、バンド活動、作曲活動、イベント企画、テレビ出演と幅広く活躍中で、趣味はケーキ作りとコスプレだとか。かなり濃い。
「僕がピュアキュア院長の増岡です！ ホームページ観に来てくれてどうもありがとう！ えっ？”歯医者さんぽくない”って？ それってホメ言葉ですよね！ 基本的に歯医者さんやってます！ 手先は器用ですが、人生には不器用かも!?＾＾；」
というアッパーテイストな自己紹介文を読むと、とても自ら進んで口の中に手を突っ込まれに行きたくはないが、アイドルプロデュースの力量はどうなのか。
アイドル界の二匹目のドジョウを狙うアイドルグループが佃煮にするほど大量発生している現在だからこそ、その辺が気にかかる。というのもAKB48の後追いとして、大人たちの浅はかな思い付きで結成されたグループに加入し、悲しい思いをしている女のコたちを数多く見てきているからだ。
前述のように往年から現在まで続く八重歯アイドルたちが天然の八重歯なのに対し、TYB48は募集要綱からして皆さん付け八重歯、つまりは偽物ということで、果たして本物に太刀打ちできるのか。八重歯アイドルに自然に接することで醸成された審美眼を持ち合わせているアイドルファンたちの採点は厳しい。「付け八重歯」が転じて「付け焼刃」に終わらねば良いのだが……。
（文＝ルート666）
やっぱ八重歯といえばともちん？