アイドルグループが、テレビでいくつの冠バラエティー番組を持っているかは、そのブレイク度を測るバロメーター。
かつて隆盛を極めたモーニング娘。は、そのグループ名の一部がタイトルに含まれる番組だけでも10番組を超える。ハロープロジェクトの番組など名前を冠しない番組も含めると、その数は30番組近くになっていた。
その他にも単発の番組も散見され、NHKは6時間半に及ぶ長時間番組『BSまるごと大全集100%モーニング娘。』をやっていたりするから驚く。
放送期間を照合すると、在京キー局で同時に4つの冠番組が同時期に放送されていたモー娘。だが、現在のレギュラーテレビ番組は『ハロプロ!TIME』(テレビ東京系)のみとなっている。全国のモーヲタが日曜に見ていた『ハロー!モーニング。』(テレビ東京系 日曜11:30~)が『ハロモニ@』になり、やがて2008年に8年以上に及ぶこの”モー娘。枠”が終了した際には、ヲタの多くが盛者必衰の感を噛み締めた。
そして、現在の”盛者”は、いわずと知れたAKB48。各局で冠番組を持つ状況は、このモー娘。に始まったと思われるが、時を経て番組内容は、より”アイドルらしからぬもの”に変遷してきている。
「かわいい子たちで番組を賑やかすだけなら、最近仕事にあぶれ気味のグラビアアイドル系の女の子を使えばイイ。喋りの立つ子も多いですからね。AKB48のように多人数のユニットをレギュラーに据えるのはリスクも大きいだけに、求められるクオリティーも大きくなる。しかし、そうはいっても所詮は若い女の子、底は知れている。そうなると重圧が掛かるのは制作サイド。どれだけ斬新な=アイドルらしくない企画をぶつけて、その素顔を引き出すか。いってみればどれだけドSになれるかが、高視聴率を得るキモなんです」(在京キー局・編成部D氏)。
人気炸裂中のAKB48であっても、番組内容がつまらなければ視聴率が低迷してしまうのは『なるほど!ハイスクール』(日テレ系、他)の例を見れば明らかだ。 そこでココでは、比較的ネット局数が多くて、各地の方々が見やすい3番組をピックアップ、そのドS振りを独断と偏見でランキングしてみる。
まずは『AKBINGO!』(日本テレビ系)。
前身番組の『AKB1じ59ふん!』から数えるとそろそろ放送期間が5年になろうとしている長寿番組。AKBが大ブレイクする以前に始まっただけあって、手心を加えないドS振りが目をひいた。
企画としては【落としちゃやーよ・タリナイ48】が記憶に深い。クイズに不正解だと粉の中に突き落とされるという単純明快な内容だが、各メンバーの面白い白塗り顔を多量に大公開。また、【ウソ発見器で本音を暴け! ショージキ将棋】では、メンバー同士の意外な人間関係が赤裸々に暴露されるなど、ファンには興味津々の内容。
現在でも頻繁に行なわれている【ムチャぶりドッジボール】は、ボールがヒットした者が各種の罰ゲームにさらされる企画。 ゲテモノ&激辛料理を食べ(高城亜樹)、ADの臭い靴下を嗅がされ(河西智美)、お歯黒を塗られ(秋元才加)、風船爆弾を持たされ(柏木由紀)…と、数々ある中で白眉だったのは”恥ずかしメイク”をされた仁藤萌乃の泥棒顔。これは番組が等身大ポップにしたほどの笑撃だった。しかしこの『AKBINGO!』、このところネタ切れなのか、AKB48人気に押されて及び腰なのか、ドS的視点では精彩を欠いている。
続いては、テレ東の『週刊AKB』。
長らくハロプロ系の番組を手がけてきたテレ東だけあって、アイドルをいじらせた時の安定感は比類ない。【AKB激辛部 激辛!死亡遊戯!!】企画は、部長の柏木をはじめとする部員たちがブルース・リーの黄色いトラックスーツを着て、激辛料理を攻略していくというもの。汗をにじませながら身悶えする様子はマニア必見! 柏木が辛さのあまり踊りだすという名シーンも生んだ。
そんな激辛チャレンジや、苦手な虫を触る(多田愛佳)、バンジージャンプ(指原莉乃)、などのドS企画は枚挙にいとまがない。
その一方で【週刊AKB緊急特別放送 大家志津香の苦悩】では人気低迷に悩む大家をフィーチャーし、【大家志津香 握手会ファン増員大作戦】に繋げ、人気UPに成功というイイ話もある。しかし、人気がないことをネタにしてしまうあたりはやはりドSだ。
『有吉AKB共和国』(TBS系)は、3番組の中では最後発のため、さんざんAKB48をいじり倒されてきた中でのスタート。
ここでパクリ企画に走らずに【人の怒らせ方を学ぶ!】企画では、温厚な性格で知られる倉持明日香の激怒する様子を収録することに成功。
他に例がないのも無理もないと思わせる馬鹿馬鹿しい企画の数々に加え、【ガチンコAKB研究生クラブ】など、研究生にスポットをあてたことも先見の明があった。ヘッドバンギング対決(指原莉乃)、甲冑を着て料理を食べる(小嶋陽菜)、ブーブークッションに座った際の音量の小ささを競う【へ選抜大会】にはメンバーの多くが挑戦。
もはや”プレイ”の域に達している企画の数々は、そのくだらない全ての企画にAKBを立ち向かわせることに意義がある。AKBを歯牙にもかけない様子のMC・有吉弘行も含め、その存在自体がドSという、若干メタ構造を持つ番組。この面白さに気付かずに、低俗とみなしてしまうのはもったいないので、ガマンして視聴することが必要。この番組、視聴者にもドSなのだ。
……と、いくら”独断と偏見”を謳ったものの優劣は付けがたい。そこで、改めてAKBの冠番組を眺めてみると、伏兵発見!
それは『AKBネ申テレビ』(スカパー! ファミリー劇場)だ。現在、シーズン8が放送されているこの番組の開始は2008年7月で、『AKBINGO!』(08年1月~)に次ぐもの。
シーズン1は既出の3番組のように面白バラエティー的色彩が強かったが、次第にドキュメント性が強くなって行く。
シーズン2の1発目の企画【山寺で悟りを開け!】では、僧侶修行を実体験。座禅、正座しっぱなしの読経、寺の内外の清掃、まき割り、滝修行、土中行(※地中に埋められる)などフルコースを体験したのは、板野友美、前田敦子、宮崎美穂、大島優子など現在でも主力のメンバーたち。後にAKB48を離脱した小野恵令奈に関しては、ここでも途中でダウンして脱落寸前に追い込まれている。
同じくシーズン2では【”優”言実行、富士山に登れ!】が伝説的。寒さと酸素の希薄な空気、そして果てしない傾斜……。満身創痍の中でも、アイドル的なサービス精神を搾り出す様子は、壮絶だった。
毎回、同一企画をなぞることなく、【不眠耐久レース】【手影絵に挑戦!】【ネ申田川48景!】【新しい自分にアニョハセヨ韓国海兵隊】などなど、多彩な内容。タイトルを一見すると「大変そう」「笑えそう」と様々な内容が予見できるが、全てがガチなドSぶりで妥協を許さない。各企画に参加したメンバーの喜怒哀楽の素顔を見せてくれることは、ファンにとってこの上なく嬉しい。
……ということで、スカパー!に加入しないと視聴できないというハンデは置いておくことにして、AKB48冠番組ドS度決定戦の1位は『AKBネ申テレビ』に決定! 決め手は番組の持つAKB愛だろう。
「ドS番組は単に意地悪なのではなく、アイドルたちが試練に立ち向かうときに見せる素顔がキモです。それはかなりの確率で感動を呼んで、そのアイドルを好きになるきっかけを与えてくれます。それを引き出すドS番組は実は”アイドル想い”なんですネ。アイドル本人たちもそういうことには気付いてると思いますヨ」(アイドルライター)
ドS番組の大部分は実は優しさで出来ているらしい。
(文=ルート666)
Sの人には「はぁはあ」度高めかも