3月11日に起こった東日本大震災から半年が経過した9月11日、各地で原発稼動への反対や被災地である福島への支援を訴えるデモや集会が開催された。
そのひとつとして、経済産業省を取り囲む「人間の鎖」が実施された。これは3月以降に新橋の東京電力本店ビル前での抗議行動「東電前アクション」に参加している団体などの呼びかけによるもので、福島第一原発とその周辺の地域について、いまだに収束のめどが立たないばかりか、住民の避難や安全確保すら進められていない現状に対して、原子力事業の監督官庁である同省とその下にある原子力安全・保安院に抗議するという趣旨である。
まず日比谷公園に集合した参加者は、13時30分ごろに新橋方向に向けてデモ行進出発。東電ビル前などを経由して、再び霞が関に戻って経産省前に集合。参加者が同省建物のある敷地外周の歩道を取り囲み、15時50分頃に手をつなぎ合う「人間の鎖」が成立した。同時に、内幸町側の同省正面では、被災地の現状について行政の不備などを指摘批判するスピーチが繰り返された。
この集会では制服や私服の警官100人以上による警備が行われていたが、歩行者の通路確保や諸注意のみで、特に混乱などは見られなかった。参加者は労組や市民団体などの姿が目立ったが、手製のプラカードを手にする市民も多数見られた。
人間の鎖が終了後、17時からは有志による10日間のハンガーストライキが開始された。
一方、都内でもうひとつの大きな行動として、新宿区内をデモ行進する「9.11原発やめろデモ」も開催された。主催は、高円寺や渋谷、新宿などのデモを呼びかけてきた素人の乱。一連のデモと同様、サウンドカーのほか、楽器やさまざまな横断幕にプラカード、中にはボディペイントを施したパフォーマーなど、工夫を凝らした演出での参加者が目を引いた。
ただし、今回のデモについてはこれまでとは違った状況となった。直前になって警察によってデモコースの変更を余儀なくされ、スタートとゴールが新宿中央公園に指定された。これについて、「警察がそこまでデモを仕切るのか」という声がネットなどで上がった。事前に了承されており、しかも2度目となる新宿デモに、こうした警察の対応に疑問の声が少なくなかった。
さらに、今回のデモでは参加者から12名もの逮捕者が出た。これまでの一連のデモで最も多い人数である。
この逮捕について、人数が多いために個々の状況は不明な部分がいまだに多い。また、当初は「参加者が警察の指示に従わなかった」「警官に食ってかかっていったのはデモ参加者の方」などという情報が流れた。
しかし現場で見ていたものの中から、「警察の方が敵対的な態度だった」「警官隊がデモの隊列に割り込んできたのが原因では」という声が多く聞かれた。
さらに、13日になって、ある参加者が「デモ隊を歩道に広げようとした」として逮捕された参加者を指名し、「そう発言したのは自分。したがって彼は誤認逮捕」という画像をネットに公開し、大きな波紋を広げている。
確かに、霞が関と新宿では、警官隊の様子や雰囲気がまったく違うことを筆者も肌で感じた。また、多くの反・脱原発のデモや集会の参加者たちからは、警察の対応の「格差」についての証言も多い。
この逮捕劇については、さらに波紋を呼びそうだ。
さて、デモ終了後、暗くなってから新宿アルタ前に移動したデモ参加者たちが集会を開催。社民党の福島瑞穂氏などがスピーチし、作家でタレントのいとうせいこう氏もポエトリーリーディングを行った。また、アイドルの藤波心さんが「アンパンマンのマーチ」を、アイドルグループ制服向上委員会が「ダッ!ダッ!脱原発の歌」をそれぞれ披露し、歓声と拍手を浴びていた。
新宿デモには、主催者発表で参加者1万人、一部新聞などのメディアでは参加者は2,200人と報じられた。
(取材・文=橋本玉泉)
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