去る9月3日、横浜市内で民族派の有志が企画する脱原発集会、「9・3右から考える脱原発集会&デモin横浜」が行われた。統一戦線義勇軍議長である針谷大輔氏その他各氏の呼び掛けによるものであり、すでに7月31日に都内で実施された集会とデモに続く第2回目となる。
当日は、大型台風12号が本州に上陸しており、その影響で暴風雨が予想された。だが、デモ隊出発前に数分のにわか雨があった程度で、天候による支障はなかった。
スタート地点で集会会場の横浜公園には、それでも台風を気にしてか、前回に比べ参加者はやや少ない感じで、集会開始時でスタッフも含めて50名ほどが参加していた。
16時10分ごろ、やや遅れて始まった集会ではまず針谷氏があいさつし、福島第一原発の事故で放射性物質が広い範囲に拡散しつつある危険性について指摘。人々への安全確保、特に「子供たちを救え」と強く訴えた。その後、一水会最高顧問の鈴木邦男氏その他の演説が続いた。民族派活動家の長谷川光良氏は、「思っているだけでは、やらないことと同じ。(今回の原発事故被害を)自分の問題として、具体的なアクションを起こすことが重要だ」と述べた。
また、7月31日のデモにも参加した著述家の松沢呉一氏は、「前回のデモには、正直なところ抵抗があった。自分が右翼だと見られたくないという思いがあったから。でも、そんなことを言っている場合ではないと感じた」と、率直な印象を語った。
一連の脱・反原発アクションでは、「理屈では分かっているが、なかなかデモや集会には参加しにくい」という声をよく聞く。素人の乱が主催した新宿デモなど数々の脱・反原発のイベントに参加し、今回の集会ではチラシ配りなどの手伝いをする新沼史子さん(35)も、「知り合いでも『デモに参加したいけれど、共産党だと思われるのはイヤ』という人はいる」と述べ、「右翼にも頑張ってほしい」と話す。
一連の脱・反原発の動きというものは、単純に環境や人体に危険なものへの拒絶という意志と論理によるものであって、本来は政治や思想信条には関係ないはずである。編集者の野間易通氏(45)が自身のTwitterで「脱原発運動は消費者運動」と指摘したのは、状況を正しく理解したものと言えよう。
さらに、脱・反原発の姿勢を続けているアイドルの藤波心さんも集会に駆けつけ、「私は日本が大好きです。もうこれ以上、私たちの国土を放射能に汚染させてはいけないです。経済がダメになるから原発が必要だと言う人がいます。でも、このまま放っておくと日本そのものがダメになってしまうと思います」とスピーチし、最後に唱歌「故郷」を3番まで歌って締めくくった。
今回の集会とデモでは、特に「子供たちを救え」というアピールが強調された。これは成人に比べて、乳幼児や未成年者がより放射線による悪影響を受けやすいということに加え、8月に発覚した、横浜市内の学校給食に使用されていた牛肉についての問題点も指摘された。これは、横浜市内にある16の小学校の学校給食で、国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された福島県産牛肉が使用されていた可能性があると報道され、保護者や地域住民などから疑問や非難の声が上がった件である。
17時18分ごろ、横浜公園をデモ隊が出発。公園を出てすぐの横浜市役所前では学校給食の件を取り上げ、「横浜市教育委員会は危険な暫定基準値による学校給食を即時中止せよ!」「横浜市は子供たちに対して本当に安全な食の基準値を策定せよ!」とのシュプレヒコールを繰り返した。
17時30分ごろにデモ隊は「イセザキ・モール」に到着。この時点で、デモ隊参加者は100名を超えていた。
イセザキ・モールでは一部警官との軽い押し問答があったものの、特に大きなトラブルもなくデモ行進は進んだ。商店街ということもあり、シュプレヒコールもそれまでのアクセントの効いたものとは異なり、語りかけるような口調でのアピールが続いた。また女性スタッフが、通行する市民に「子供を守れ」と印刷された風船を配って歩いた。
その後、デモ隊は関内駅北口の大通り公園・石の広場に18時ごろ到着。最後に針谷氏が改めて、横浜市の学校給食に対する問題点に言及し、デモと集会は無事に終了した。終了時の参加者は、筆者のカウントで140名程度であった。
今回のデモでは、針谷氏ほか参加者からは、「子供たちを被曝から守ること、土地や食物の安全が確保されること。それだけを望む。そうしたことが実現できれば、右も左も関係ない」というアピールが強調された。
前回ならびに今回の集会とデモは、「右から~」と銘打ってはいるが、いわゆる右翼的と見られがちなアピールではなく、素朴かつ率直に「郷土と子供たちの健康を脅かすものを取り除きたい」という意志によるものだったと感じた。前回は民族派の活動家や賛同者が多かったが、今回は一般市民の姿が目立った。また、都内や近隣からの参加のほか、茨城県つくば市から来たという男性もいた。
針谷氏は筆者のインタビューに、「今後も(脱原発についてのアクションを)続けていきたい」と意欲を見せた。
(取材・文=橋本玉泉)
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