『ギブアンドテイク』という言葉がある。「何かが欲しいのなら、一方的に欲しがるのではなく、自分も相手に何かを与える努力をすべきである」という、大変ごもっともな言葉で、日本語訳すると『持ちつ持たれつ』といったところか。ビジネスなどの場において、ちょくちょく使われる言葉ではあるが、日常生活にも同じことが言えるだろう。しかし最近、『ギブアンドテイク』の精神がなくなりつつある気がしてならない。といっても、ビジネスの世界や日常生活においてではない。男女間の性行為においてである。
『フェラチオをしてもらったら、クンニリングスを行う。クンニリングスをしてもらったら、フェラチオを行う』というのが、『ギブアンドテイク』の精神にのっとったセックススタイルかと思うのだが、「ペッティング(愛撫)や挿入は好きだが、フェラチオは苦手」という女性も少なくない。口の中で陰茎がムクムクと大きくなっていく過程はフェラチオの醍醐味かと思うのだが、「シャワーを浴びた状態でのフェラチオなら対応可能だが、即尺は無理!」「陰茎なら可能だが、陰嚢は舌触りが苦手。アナルなんてもってのほか!」という者もいれば、「カウパー氏腺液の味・匂いがNGだから、陰嚢やアナルはもちろんのこと、なるべくなら陰茎も舐めたくない」という女性もいた。女性側の考えがこういった傾向にあるのは、男としては嘆かわしい限りである。
ところが、男性陣の中にも、「クンニリングスは行わない派」というセックススタイルの人が存在する。「本命のカノジョもしくは美人なら舐めるが、本命以外や不美人は舐める気が湧かない」「潔癖過ぎるのかもしれないが、男性器よりも女性器のほうがグロテスクな気がする」などの理由が挙げられた。しかし、相手から施されるフェラチオは好ましいとのこと。『ギブアンドテイク』の精神に反している考え方である。先に挙げたフェラチオをしない女性たちも、「ヴァギナだけでなく、足の指を舐められるのも好き!」など、相手からのオーラルプレイは大歓迎という人が多かった。相手が納得しているなら第三者が口を挟むことではないが、やはり日本人たる者、『お返し』を尊ぶ、礼節あるセックスを重んじる心があっても良いような気がする。
このように、現代人のオーラルセックス離れが進む一方で、男性に根強い人気を博しているのが『シックスナイン』ではないだろうか。シックスナインとは、男女の頭と足の位置を互い違いにして性器を舐め合うプレイのこと。視覚で興奮を得る傾向の強い男性側としては、至近距離で女性器を楽しみつつ、陰茎にも刺激を受けられるのだから、一粒で二度おいしいプレイと言えるだろう。ところが、男性ファンが多いシックスナインではあるが、女性からの評判はすこぶるよろしくない。「格好が間抜けである」「舐めるか舐められるか、どちらかひとつに集中したい」「不自然な行為である気がしてならない」など、理由はさまざま。余談ではあるが、筆者も元はシックスナインが苦手であった。というのも、以前は男性上位の体勢でのシックスナインしか行ったことがなかったため、咽喉が苦しい上に、自分の口が据え置き型オナホールになったような気がしてならなかったのだ。しかし、側位でのシックスナインを知ってからは、これまでのシックスナインに対する偏見は払拭された。カノジョがシックスナイン嫌いだという人は、もしや男性上位の体勢ばかりで行ってはいないだろうか? ぜひ一度、側位シックスナインをお試し頂きたい。
逆に、女性ウケは悪くないのだが、男性ウケがよろしくないプレイも存在する。女性は、クンニリングス直後のキスも平気であるという人がほとんどだが、男性はフェラチオ直後のキスに嫌悪感を示す人も多い。理由は、言うまでもなく「自分の陰茎と間接キスするのは抵抗がある」という声が圧倒的多数。中には、「過去に、口内発射直後のキスで、カノジョが口の中に溜めていた精液を流し込んできて、それ以来トラウマ」という声もあった。そういった例外はさておき、やはり『ギブアンドテイク』の精神にのっとって、フェラチオ後のキスにも応じる懐の深さを持っていたいものである。
(文=菊池 美佳子)