男性は外で働き、女性は家で炊事洗濯……という考え方は、もはや過去の産物であるといっていいだろう。今や、男性と同じように総合職などでバリバリ仕事をこなすキャリアウーマンも珍しくない。そして、夫婦間の役割において、男性側が育児や家事を担当する『主夫』というスタイルも確立されつつある。主夫とまではいかなくても、家事に全く不自由しないという男性は少なくないのではないだろうか。
家事の中でも、掃除や洗濯には、「定期的にやらなければならないもの」という義務感がつきまとうが、趣味感覚で楽しむことの出来る料理に関しては、特に注目が集まっている。イケメンシェフと呼ばれる料理家たちがテレビ番組や雑誌を賑わし、芸能界にも料理の腕前はプロ級であるという男性タレントが多数存在する。書店の料理本コーナーを覗いてみると、女性料理家の著書よりも、男性料理家の著書のほうが多いのではないか? というくらい、『オトコの料理』はもてはやされている。
こういった『オトコの料理』ブームに伴い、プロの料理人やタレントのみならず、最近では一般男性の中にも料理に親しむ男性が増えてきた。少し前に『弁当男子』という造語が登場したのを覚えているだろうか。弁当男子とは、読んで字の如く、自分で弁当を作って会社に持っていく男性のことである。早起きして弁当を作るのはさすがにムリという男性でも、夕食や土日は自炊しているという話はよく聞く。彼らに、料理をする理由を訊ねると、「栄養面を考慮して」「節約を考えて」という声に次いで、「料理がデキるほうが女性にモテる」という意見もチラホラ聞かれた。
ここまで聞いて、「よし、俺も料理を始めて女性にモテよう!」と思った人はちょっと待って頂きたい。果たして、料理がデキるオトコは本当にモテるのだろうか? 女性側に意見を求めたところ、「料理が上手すぎる男性は、女性が作った料理に厳しいのではないか?」という見方の女性が意外に多かった。彼女たちの名誉のために申し上げるが、彼女たちは決して料理が苦手というわけではない。彼女たちとて、最低限の料理基礎は身に付けている。にもかかわらず、料理がデキる男性には引け目を感じてしまうというのだ。Aさん(30代前半・女性)に聞いたところ、「飲み会で得意料理の話題になり、『カレー』と答えたら、『どうせ市販のルーだろう? 俺はスパイスから調合するぜ!』と言われドン引きした」とのこと。Aさんにとって料理はあくまでも生活の一部。いちいちスパイスから調合していては、時間がいくらあっても足りない。その男性はおそらく、料理を趣味として捉えていたのだろう。
共働き夫婦の女性が家事の分担を声高に叫ぶ反面、料理男子を敬遠する女性もいるとなると、オトコとしては理解に苦しむところである。では、次のように考えてみては如何だろうか? 貴方のカノジョが、自分よりもクルマの運転が上手かったら、なんとなく気まずく感じることと思う。「いや、運転上手な女性のほうが、ドライブデートの時に運転を代わってもらえるから良い」という男性は、電球交換や家具の組み立てがサクサクこなせる女性を想像してほしい。「俺の出番はないな……」という心境になってしまうだろう。
もちろん、男性が料理をしてはいけないということはないし、女性とて車庫入れがスムーズにこなせるほうが良い。しかし、相手が負担に感じるほど、自身のテクニックを押し売りしないほうが、円滑な男女関係が築けるのではないだろうか。男性は、料理の腕前をアピールするよりも、ベッドにおいて女性をどう料理できるかという腕前を磨いたほうがモテるかもしれない。女性側も、スムーズな車庫入れはさておき、男性器をスムーズに受け入れたがる女性のほうが、圧倒的に親しまれるだろう。
(文=菊池美佳子)