「最近イッていないなぁ」という女性の声をちょくちょく耳にするようになった。イッていない、といってもオーガズムの話ではない。ラブホテルの話だ。だからこそ、2011年・節電のこの夏は、自分自身の意思で室温調節が可能なラブホテルへの注目が高まってほしい! と切に願う筆者である。数年前までは、ラブホテルに行くことが、こんなにも贅沢に思える時代になるとは夢にも思わなかった。
ラブホテルで支払う料金は、時間帯や地域にもよるだろうが、宿泊でだいたい7,000円~10,000円。休憩の場合は、3,000円~5,000円程度といったところ。この額を高いと思うか安いと思うかは、連れて行ってもらう側が決めることではなく、支払う側……一般的には男性側が決めることだ。よって、女性側がとやかく言うのはお門違いではあるのだが、ひと昔前に比べると、明らかにラブホテルに行く機会が減ってきていることを実感しているという女性が多い。ひと昔前とは、ここでは約10年前を指す。バブル崩壊後とはいえ、20代の若い男性でも、女性をラブホテルにエスコートするくらいの余裕は持ち合わせていた。
しかし最近では、性行為は専ら自分の家、もしくは女性宅という男性が少なくない。しかも、交際中のカップルのみならず、飲み会やコンパなどで意気投合した一夜限りの相手とでも、ラブホテルは利用せずに、家で済ませるというパターンが珍しくなくなってきているのだ。バブルを経験したアラフォー世代に聞いてみると、「一夜限りの相手に、自分のプライベートゾーンを見られるのは抵抗がある」という理由から、ラブホテルを利用するという人がほとんどだったが、最近では「ラブホテル代がもったいない」という懐事情のため、なんとか自宅セックスに持ち込もうと考える人が急増している。
この流れに対して、女性側に意見を聞いたところ、「出来ればラブホテルが望ましいのだが、不況なのでやむを得ない」とのこと。しかし、ラブホテルでなくても妥協するといっても、何処でも良いというわけではない。女性側が「うちへ来て!」と言ってくれているならノープロブレムなのだが、「散らかっているから私の家はダメ!」と拒否しているのに強引に上がりこまれた! と憤慨する女性も。尚、「散らかっていても気にしないよ」という男性も存在するが、女性側の言い分としては「本当に散らかっているわけではない」とのこと。自分のテリトリーに入ってきてほしくないということを、遠回しに言っているだけなのだ。みなまで言わせるな! というのが、女性側の本音である。尚、女性側の家が不可の場合、屋外で事に及ぼうとするのは論外である。
女性側の家もダメ、屋外もダメ、ということになると、残された選択肢は「じゃあ、俺の家に来る?」ということになるのだが、女性である筆者がこれまでお泊りさせて頂いた男性宅は実に様々であった。30歳前にして、高級タワーマンションで悠悠自適な一人暮らしを謳歌している男性もいれば、四十路を過ぎても、学生が住むようなワンルームアパート暮らしの男性もいて、「日本が格差社会になりつつあるというのはこういうことだったのか!」と、痛感させられた。何もこれは、学生が住むようなワンルームアパートが悪いということではない。長引く不況の影響で、学生時代から現在に至るまで、住居レベルがいっこうにアップしていない人が珍しくない時代であるという証しなのだろう。
格差社会という観点から見ると、クルマの所有率に関しても同じことがいえる。クルマは、昭和のバブル世代にとっては”女性とのデートの必需品”であったが、今やクルマの所有どころか、運転免許すら取得していないという人も見受けられる。「クルマがなくても、公共交通機関の発達によって何処にでも行ける!」という理由もあるかもしれないが、ワーキングプア(正社員として、もしくは正社員並みに働いても生活がギリギリの層)が減らない限りは、クルマの所有率はいっこうに上がらないだろう。
こうして考えると、ひと昔前の”普通”が、現代では”贅沢”の部類に入るということを、いやおうなしにも思い知らされる。普通にクルマが所有できる時代、高級タワーマンションとまでいかなくとも、年相応の住居環境、そして、普通にラブホテルでセックスできる時代になってほしいものだ。
(文=菊池 美佳子)