日本にとどまる外国人たち 彼らが日本を離れない本当の理由は? Vol.1.六本木・不倫妻編

※イメージ画像 photo by gbrummett from flickr

 多くの外国人が働く六本木。クラブやバー、レストランが立ち並び、世界各国からの観光客も訪れる、日本随一の国際的な繁華街だ。

 3月11日、日本を襲った東日本大地震。その後の計画停電の影響により、六本木からも明かりは消え、人通りも少なくなった。震災から2週間後、筆者は六本木に潜入取材に行った。学生時代に六本木の、とあるレストランでアルバイトをしていた経験があり、顔見知りの外国人も多いのだ。

 震災後各国大使館から在日外国人に出された「避難勧告」。それなのにも関わらず、「私は今母国に帰ろうだなんて思わないわ」と、強い口調で言い切るルーマニア人女性に出逢った。彼女の名前はアナスタシヤ(愛称アナ)。真っ白な肌に美しいブロンド髪、濃い緑色の瞳、身長は170センチ。豊かな胸にスラっと伸びた美脚。モデル並みに美しい彼女は、来日して6年経つ。人妻で29歳だ。

「通い始めて2年になるかな、週1でホストクラブに通っているの」

 ダンサーの仕事をしていた彼女は、職場で出逢った日本人男性と恋に落ち結婚。ホストにハマった理由は、現夫との結婚生活に原因があった。

「私は結婚してから専業主婦になったの。旦那が望んでいたから。でも彼は仕事が忙しくてほとんど家に帰って来ないし、一緒に夕ご飯を食べていたのは最初の2カ月だけ。旦那はお金、沢山持ってる。でも私は凄く寂しかった。だから、旦那には自分の力でお金を貯めたいと言って、夜の仕事をするようになったの。そこで出逢った男が、ホストだった。六本木でね」

 アナがお気に入りのホストとの写真を見せてくれるという。彼女のiphoneを開くためのパスワードが異様に長いところが気になった。そうだ、この女性は不倫をしていることになるのか…そんなことが頭をよぎっているうちに、彼女は笑顔で写真を見せてくれた。長身で黒髪短髪、ジャニーズ系の爽やかなイケメン。一見、ラブラブな国際恋愛カップルに見える。

「彼は旦那の存在を知ってる。でも私を彼女のように扱ってくれる。身体の関係だってあるし、旦那よりも彼とのセックスの方が大好き(笑)。私は自分で稼いだお金はほとんど彼に会いにいくために使ってる。もったいないなんて思わない。だって、私を幸せにしてくれて、寂しさから救い出してくれたのが彼なの」

 淡々と語るアナだが、写真を見ながら、筆者には少し気になった点があった。写真と比べると、今の彼女の体型がいくぶんかふくよかになっている気がしたのだ。まさか妊娠しているのだろうか。いや、こんな質問を投げかけては失礼ではないか? 筆者の表情が曇ったからか、突然沈黙してしまったからか……、アナは自ら答えてくれた。

「気づいた? やっぱり、あなた女性だものね(笑)そう、私妊娠したの。旦那にはあなたの子だって言ってる。喜んでるわ。正直私も、旦那の子なのか、彼の子なのか分からない。DNA判定でもしないとね? でも、これでいいの。私が本気で愛した男との間に、神様が新しい命を与えてくれたことには変わりないでしょう? 神様に感謝してるわ」

 アナはこれから生まれてくる子供を、日本人として育てていくという。これから先、子供が生まれてからもホストの彼に会い続けるのかという質問には「明日何が起こるかは神様にしか分からないわ」と、その美しい微笑みでアッサリと流されてしまった。

 繁華街六本木。そこには、今まで出逢ったことのない数多くのエピソードがまだまだ眠っている……そんな気がした夜だった。
(取材・文=秋田まちこ)

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