敵対組織のヤクザ10人をうっかり殺してしまったチンピラと、精神を病んだ母親と暮らす聾唖のパンクロッカーとが、エキセントリックにかき鳴らす破滅的な純愛—-。そんな設定からしてすでに破天荒な、インディーズ魂あふれるカオティックムービー『デストロイ・ヴィシャス』(島田角栄監督)が、東京「ユーロスペース」を皮切りにいよいよ全国各地で公開される。
というわけで、”エロ賢い”を標榜しているわりには、なにげにB級テイスト満載のカルト映画も大の好物なメンズサイゾーでは、本作で映画初主演を飾った人気グラドル・松本さゆきちゃんを直撃。やたらと豪華な役者陣を揃えつつも、実は過酷を極めたという撮影現場を難なく乗り切ってみせた、彼女のふわふわぁ~っとした魅力に肉迫した!!
──まずは初主演おめでとうございます!!
松本さゆき(以下、松本) ありがとうございますっ!!
──主役は初めてな上に、役どころが聴覚障害者で、しかもパンクバンドのヴォーカル。不安はなかったですか?
松本 それは、もちろんありましたよ。でも、実際に名古屋で活動している『BRIGHT EYES』っていうバンドの映像(※)なんかも事前に見せてもらってましたし、撮影前にはロケバスのなかで監督自らが「こうするんだよ」って実践してみせてくれたりもしてたんで。それに、語弊があるかもしれないですけど、私のセリフは多少間違えてても誰も気づかないところがあって……(苦笑)。そのへんは字幕がつくってことに若干、甘えちゃいましたね。
──さゆきちゃん演じるマリアのように、うまくしゃべれないっていう設定だと、セリフより歌のほうが難易度は高かったんじゃ?
松本 そうですね。高校のときから『銀杏BOYZ』さんとかパンクは好きで聴いてたんですけど、カラオケで歌ったことはあっても、ステージで魅せる歌い方なんて普通しないじゃないですか。なので、同じ女の子がヴォーカルの『ミドリ』さんのライブDVDを買ってみて、「こんな感じなのかなぁ~」ってイメージしたり、自分なりに研究してみました。
──その甲斐あって、カッコいいライブシーンになってましたよ! 一緒に本編を見たヤツなんか、「劇中歌のサントラが欲しい」って真剣に言ってたくらいで。
松本 またコアな人がいるもんですねぇ(笑)。でも、そう言っていただけるのは、ホントありがたいです。「ヘタでもいいから、とりあえずやりきってくれればいい」って監督から言われるままに、とりあえずやりきった感じだったんで。
──ところで、現場はなかなかのハードスケジュールだったとか。体力的にはどうでした?
松本 私自身、他の現場での経験があんまりないので、そこまで大変とは感じなかったですね。むしろ「これが普通なんだろうなぁ」ってくらいに思ってて(笑)。あんまり寝られなかったけど、撮影の合間にお布団を敷いてくれたりもしましたし、どんなに遅くなってもホテルには帰してもらえましたし。お手伝いに来てくれてた専門学校の学生さんなんて、真冬なのに現場で雑魚寝とかだったんで、スタッフさんのほうがツラかったんじゃないですかね。
──そりゃ、そうでしょうけど……、商業映画で主演女優が雑魚寝してたら大問題ですよ(笑)。
松本 でも、オール大阪ロケだったんで、現場にはマネジャーも来てなかったんですよ。だから最後のほうにある、マリアが新見(=中井正樹)のアソコをちょん切るってシーンを撮るときも、スタッフさんからは「事務所にはこんなことするって言ってないけど大丈夫?」って言われながら、「分かんないですけど、私は大丈夫なんでやっちゃえばいいんじゃないですか?」って(笑)。
──それは、かなりアグレッシブですね。しかも、それを(取材当日の段階で)横にいるマネジャーさんがまだ見ていないという(笑)。
松本 監督はブッ飛んでる人ですけど、ちゃんと愛はある人なんで。そんなに露骨なことにはなってないんで、たぶん大丈夫です。
──ブッ飛んでると言えば、かつて一世を風靡した”騒音おばさん”を彷彿とさせる母親役を、嬉々として演じていた内田春菊さんもキョーレツでした。共演された感想は?
松本 なんだか一緒にいて落ちつくというか……悟りを開いているような方でしたね(笑)。現場で「不安なんですよ」みたいなことを言ってたら、「さゆきちゃんは自分のやりたいようにしないから、逆にいいと思うよ。監督の作りたいものと違うように見せようとするのはエゴだから、そのままでいいんだよ」って言ってもらえて。それがスゴく心に響いて、「じゃあ、いいか」って思えましたし。
──そんな深イイことを言ったそばから、「引っ越し~!」と絶叫してたわけですね(笑)。お気に入りのシーンはやっぱり春菊さんとのくだりだったり?
松本 撮影の初日が、家が爆発して春菊さんたち家族と真っ黒コゲになるってシーンだったんで、それは衝撃的でしたね。いきなり特殊メイクして、ドリフのコントみたいに髪の毛逆立てて(笑)。あと、血まみれになりながらギターを弾くシーンも、血糊が目に入って痛かったけど、ちょっと気持ちよかったです。
──では最後に、今後の目標なんかを聞かせてください。
松本 私、意志が弱すぎて、目標を立てても絶対できないタイプなんで……。もともと万人ウケするタイプではないので、「これは松本さゆきしかできないね」って言ってもらえるような仕事をこれからもやっていけたらいいな、と。あんまりやったことないので、キュンキュンするような女の子の役とかはぜひやってみたいですけど(笑)。
──あんまりガツガツしてない感じがするんですど、実はそんなにいまのお仕事に執着がなかったりします?
松本 ふふふ。流れ、流され、6年目です(笑)。実は面倒くさがりで、できればテキトーにやりたいくせに、認められたい願望はスゴくあるんで、結果的にがんばらなくちゃいけなくなっちゃうって感じですね。基本的には求められてるうちは一生懸命にやって、潮時になったら地元の三重に帰ればいいやってスタンスなんで。
──じゃあ、10年後には地元の三重で赤福を売ってる人になってる可能性もなくはないと。
松本 全然、それもアリですねぇ(笑)。あとは、精神的に安定していて、心が広くて、毎日カワイイって言ってくれる素敵な人に出会えれば。
──劇中の新見とは対極にいるような?
松本 恋だったらそれもいいですけど、私にはマリアのような行動力はありませんからねぇ。この映画ぐらいの運命的な出会いをしたら、もしかすると、すぐ心変わりしちゃうかもしれないですけどね(笑)。
グラビアなどで魅せるクールなイメージとは対照的に、つかみどころのないふんわり感をいっぱいに漂わせてインタビューに応じてくれたさゆきちゃん。この得もいわれぬ不思議ちゃんっぷりには、百戦錬磨のわがメンズサイゾーもメロメロ。そりゃ、中島哲也、ギャスパー・ノエといった大物監督たちも虜にさせられるわけです。
そんなこなんで、幻の初主演作にして、杉作J太郎監督の4年越しの新作『チョコレート・デリンジャー』も待機中の女優・松本さゆき。そのポテンシャルの高さには、これからも要注目DEATH!!
(写真・文=鈴木長月)
※島田角栄監督が本作の取材をするなかで出会った、聾学校出身の5人組(うち1人は健聴者)バンド。彼らの取材をもとに島田は一昨年、ドキュメンタリー映画『ジャップ・ザ・ロック・リボルバー』を発表した。
◆松本さゆき オフィシャルブログ『さゆ☆風呂スイーツ』
◆島田角栄監督オフィシャルwebはこちら
【デストロイ・ヴィシャス予告編】
ほんわかキャラに超絶ボディ! 可愛い!!