ブラジャーはおっぱいのためだけにあるのではないらしい。と言っても、それは必ずしも「男性の目を意識して」という意味ではない。もちろんそういったセクシー路線、清純派路線などの華やかかつ実用的な下着が売り場に並ぶ一方で、国内外のランジェリーブランドによっては、こぞって変わったブラジャーが制作されていることをご存知だろうか。
アメリカのランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」は毎年「ミリオンブラ」なるものを発表しており、今年もそのお披露目が行われた。今回のミリオンブラは「Bombshell Fantasy Bra」と名付けられ、なんと3,000個のダイヤモンド(60カラット)、ブルーサファイヤ(82カラット)、トパーズがちりばめられ、6人の職人による手作業に1,500時間を要したという。しかしこのミリオンブラ、2004年には今年の5倍の1,000万ドルという破格の予算で制作されたが、不況の影響で年々縮小傾向にあるという。しかし、この無意味なゴージャスさが女心を刺激しているのは間違いない。
また、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる賞」として創設された「イグ・ノーベル賞」の「公衆衛生賞」を09年に受賞したのは、ガスマスクにもなるブラジャー「エマージェンシーブラ」(画像:http://www.ebbra.com/)だ。このブラジャー、平時は普通の(?)ブラジャーとして身につけられるが、有事にはカップを分離して2つのガスマスクとして使うことができる。発明したのはアメリカイリノイ州に住むエレナ・ボドナー博士。博士はチェルノブイリ原発事故の影響を研究する中で、「当時、被災地の人々が事故発生から数時間のうちに安価なガスマスクを手に入れられたら放射能疾患の原因となる物質を吸い込むことを避けられたかもしれない」との思いからこの商品を生み出したそうだ。現在はインターネットを通じて約2,500円で販売されており、ものすごい反響と人気だという。また、男性版として肩パッド部分に過パネルを縫い付けたワイシャツも発表された。確かに、有事の際にブラジャーに群がる男性というのはあまり見たくない。ちなみに、おクチへのフィット感の問題からか、BカップとCカップのみの展開だ。
翻って日本はどうなのかというと、トリンプ・インターナショナル・ジャパンが毎年2回発表する、その年の時流や話題をテーマにした「ユニークなブラジャー」がある。一部には「バカブラジャー」として有名なこのトリンプの企画系下着、起源は1987年の「金彩友禅」という高級感を全面に押し出したブラジャーだった。この少々毛色の変わった製品をマスコミが取り上げたことにより、トリンプの怒濤の「ユニークなブラジャー」リリースラッシュが始まったようだ。一番最近の2010年5月に発表されたのは、「マイ田んぼブラ」だ。今回は「農業」に着目したそうで、「いつでもどこでも手軽にコメ作りを体験できるコメ栽培キットに変身するブラジャー」は伊達ではなく、カップ部分を合わせるとプランターになり、パッドはアームバンドになり、ブラヒモにはスズメ対策の見張糸を使用するという念の入れよう。さらにベルト代わりのホース、土、苗、もんぺ、取りはずしできる軍手などのオプションも充実している。もちろん非売品だが、気になった人は過去の作品をチェックしてみてはいかがだろうか。ちなみに、例年通りなら来たる11月初めに新作が発表されるはずだ。どんな企画を放り込んでくるのか、心待ちにしようではないか。
と、ここまで変わり種ブラジャーを紹介してきたが、実際に女性が着る下着は、どのように選ばれているのだろうか。
ワコールウェブサイトには「風水で下着を選ぶ」コーナーがある。ここでは「仕事運アップのランジェリー」という言葉が……。いつのまにか女性”性”の象徴であるはずのブラジャーも、男性の目線など置いてけぼりにしているようだ。「オレ、上下揃ってないとダメなんだよね」などのこだわりを持つ男性も少なからずいることだろうが、女性側にはあまりそのこだわりは伝わっていないらしい。
「だってさ、ブラジャーなんか見てないじゃん。脱いでるときなんて大抵興奮してるし。汚くなきゃなんでもいいんじゃないの? 最初くらいじゃない、勝負下着とか着るのって」(26歳女性)
確かに下着で女性の魅力が大きく変動するわけではないが、男性にもそれ相応のこだわりはある。そんなこと口には出せない、あるいは言っても分かってくれない、という男性はパートナーに下着を贈ってみるというのも一つの手だ。なんだかんだいって、ちょっとイイものだと結構値が張るブラジャー。トリンプの調査では、女性の47%がホワイトデーに下着を贈られたいそうで、さらに20%は「誰からでもうれしい」そう……ってほんとに!?
ヘタしたら女性よりもブラジャー好き?