【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第14回】

99年生まれも!! 国産アイドル・bump.yのもたらす脳内麻薬と安心感

CD『voice』SMR

 自分と世間との感覚がズレているなぁ、と感じることがある。その端的な例が、前回ご紹介したTomato n’Pineの「キャプテンは君だ!」のチャート情報が、日を置いて何度もオリコンの会員制データベースで検索しても出てこないことだ。CD情報自体はあるのに……。

 そのTomato n’Pineと同日にシングルがリリースされ、9月6日付の週間ランキングで50位に登場したのがbump.yの「voice」だ。bump.yは、松山メアリ、桜庭ななみ、高月彩良、宮武美桜、宮武祭による5人組。8月30、31日に開催された「アイドルユニットサマーフェスティバル2010」にも、SKE48、スマイレージ、ももいろクローバーとともに出演していたが、アイドル専業ユニットというわけでもない。全員が堀北真希や黒木メイサなどが在籍するスウィートパワーに所属している若手女優であり、そのユニットがbump.y。1991年生まれの松山メアリから、99年生まれの宮武祭まで、5人組にしては年齢の幅が広いのはそのためだ。というか、99年ってついこの間じゃないか? もうアイドルなの!?

 bump.yのメジャー・デビュー・シングル「voice」のビデオ・クリップを見て衝撃的だったのは、一気に80年代の河合その子あたりまで連想してしまう世界だったことだ。bump.yも河合その子も同じソニーミュージック(旧CBSソニー)なのだが、まさに安心のソニー印のアイドルといった雰囲気。これは貴重だ。

 ビデオ・クリップは、洋館のような建物に引っ越してきたbump.yの5人の後ろ姿から始まる。彼女たちの手にはダンボール箱……だが、封をしてない演出が心憎い。屋内で、庭の芝生で、はしゃぎ、そして歌うbump.y。5人が寄り添って壁にもたれてうたた寝をしているとか、どんだけドリーミーなんだよ……! とにかく清楚さを強調するような映像で、いろいろ突っ込んでしまうのも独自の世界観の完成度の高さゆえだ。

 キャッチーにして、ストリングスやピアノの響きに包まれた格調高いポップスである「voice」の作詞作曲編曲をしているのは藤末樹。この連載でも紹介した東京女子流の「おんなじキモチ」の作曲者であり、多数のJ-POPを手掛けている作家だ。この連載としては、小桃音まいへの提供曲の多さにも注目したい。

 カップリングの「One Emotion」は、ゲーム音楽で知られる内田智之が作編曲。こちらも「voice」と同様にアコースティック感を前面に押し出したサウンドだ。楽曲、ビデオ・クリップ、CDや公式サイトのアート・ワークまで含めてbump.yの世界観の徹底ぶりは現世の辛さを忘れさせてくれるレベルだ。辛かったら聴こうよ、bump.yを……。

 同じスウィートパワー所属でソニーミュージックからCDをリリースしている黒木メイサともまったく異なるこの路線。そういえば先日、やはりソニーミュージックから日本デビューした韓国のBrown Eyed Girlsのイベントを見たのだが、KARAや少女時代に続いて、あのサウンド・プロダクションとパフォーマンスのレベルのK-POPが次々に登場したら、J-POPもうかうかしていられないだろうと再認識したものだ。しかし、bump.yの良い意味でドメスティック極まりない安定感は、連綿と紡がれてきた日本のアイドル文化の誇るべき産物だとも思う。

 とりあえず、可愛い女の子たちが歌の上手い下手に関係なくユニゾンで歌うときに発生する特有の幸福感に、脳内物質のドーパミンを大量に分泌したくなる。ピューッと吹き出すこの感じ。特に桜庭ななみが眩しいので注目。bump.yは脳内物質のセロトニンのような存在だ。大量の摂取を推奨したい。

2010/6/27 アクトレスユニット bump.y 写真集発売記念イベント(GirlsNewsTVより)

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