問われる大企業の危機管理能力 HP社を揺るがした「ポルノ女優」

ジョディ・フィッシャー出演作『Body of Influence 2 』より

 ヒューレット・パッカード(HP)社といえば、パソコンやプリンターなどの電子機器の製造を手掛ける大手多国籍企業。1939年に計測器メーカーとして創業され、1970年代に電卓の開発などを手がけてデジタル関連の技術を磨き上げ、現在ではパソコンやプリンターの売り上げで世界一となっている、大企業中の大企業だ。(iPodやiPhoneが世界中で爆発的な売れ行きを見せているAppleの約3倍、WindowsでOS市場を独占する Microsoftの2倍近い売上高を誇る企業と聞けば、IT業界内におけるその巨大さの片鱗がうかがえるだろうか)

 そのヒューレット・パッカード社のCEO、すなわち大企業の親玉総元締、勝ち組中の勝ち組であったマーク・ハード氏が、今月6日、辞任に追い込まれた。しかもその理由が、「かつてポルノ女優であった社員へのセクハラ」だというのだから驚きだ。

 セクハラが発覚したのは、元ポルノ女優で、07年から09年まで契約社員として社長室付きで雇われていた、ジョディ・フィッシャーさん(50)の提訴による。

 事態を重く見た役員会が行った素行調査によると、同社でも異例である、CEOによる2回の「面接」がハード氏の意志によって行われたこと、また、彼女に支払う経費を不正に請求していたことが発覚した。問題が表面化したこともあって、5年にわたってヒューレット・パッカードの好調な業績に貢献してきたハードCEOは引責辞任となった。これに対し、フィッシャー史は以下のようにコメントしている。

マーク・ハードが本件で職を失い、驚くとともに悲しんでいます。そうするつもりはまったくありませんでした。マークと私の間には、不倫や、性的な関係はいっさいありません。提訴は取り下げ、マークとも、非公開ですが和解に至っています。

 また、「会長は、フィッシャー氏が元ポルノ女優だと知らなかったのでは?」という疑問もあるかもしれないが、これに関してはあり得ないと推測される。ジョディ・フィッシャー氏は80年代から90年代にかけて多くのポルノ映画に出演しており、アメリカでは有名な存在だ。そして、IT企業の多くでは、選考にあたってネット検索をしていること。インターネット上で彼女の名前(Jodie Fisher)で検索すると、若き日の彼女の艶姿を多数確認することができる。

「うちの会社でも、最終選考に残った志望者の名前をググって(検索して)います。佐藤とか鈴木とか、よくある名前の場合は特に何ともありませんが、珍しい名前だったりした場合には、何らかの個人的な経歴がヒットすることも少なくありませんね」(東証一部上場企業人事担当の男性)

 これらの情報から、

「昔大好きだった、思い出のポルノ女優が部下にいた。いてもたってもいられないCEOは、『面接』を口実に私的な逢瀬を繰り返し、しかも会社のカネを不正に利用していた(ただし男女関係はなし)」

 というようなことを邪推されても仕方がない。

大企業の会長というと、ヤリたい放題でそれが表に出ることもない、といったイメージかもしれないが、あくまでも「雇われCEO」であったハード氏。企業のガバナンスが進んだ現在では、旧時代のように、皇帝然と振る舞うわけにもいかないようである。

奇しくも、英語で「釣り師」いう意味と同じ名前を持つフィッシャーさん。もしかしたら、この事件自体が、インターネットの住民たちを巻き込んだ「釣り」だったのかも!?

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