今年の初めごろからやたら注目されてきた歴女ブームも、最近はずいぶん落ち着いたように思う。しかし、だからといって歴女の絶対数が減少したわけではなく、現に記者の周りにいる歴女は皆「まだ増えてる」と口を揃える。
もはや歴女は、”オタク”の中のマニアックな歴史ファンではなく、無視しがたい大勢力である。この様子ならば、先々お近づきになった女子がたまたま歴女だというようなことも起こってくるだろう。学生時代、社会科で赤点を積み重ねていた男子は大ピンチである。今回は、来たるべき日に備え、記者の知るディープな歴女のひとり歴子(仮名・22歳学生)に「歴女を落とすための正しいデートプラン」を立ててもらい同行してみた。
●歴女のためのデートスポット1 東京国立博物館
上野博物館などとも呼ばれている施設だが、正式名称は東京国立博物館。この日は特別展”皇室の名宝”が開催されており、狩野永徳の『源氏物語図屏風』など教科書で見覚えのある品から、ゴキブリにしか見えないホタルの大群があしらわれたすずり箱、納期までに弓矢を集められなかったことを詫びる大昔の中間管理職の始末書など、妙なものがいろいろ飾られていた。もちろん、こういう場で思ったことを素直に言ってもバカが露呈するだけなので、「ふーん、なるほど」と鑑定士っぽく唸っておくのが大人の態度。観覧客の大半はオバ様方だったが、歴史マニアっぽい若いカップルもそれなりにいて、確かにデートコースとして機能している様子だった。
●歴女のためのデートスポット2 皇居東御苑
上野から大手町まで地下鉄を乗り継ぎ、大手門から皇居の御苑へ。芝生の広場や巨大な雑木林を見下ろせる高台があり、抜群の景観は気分爽快。近所に住んでいるっぽい軽装の老夫婦や、外国人観光客なんかがたくさん散策に来ていた。
歴子「皇居っていうのは、明治に入る前までは徳川家の将軍が住んでた江戸城だったんですね。特にこの東御苑は本丸のあった場所で、天守閣跡の大きな石垣なんか見てて萌えます」
ただし、歴女御用達のゲーム『戦国BASARA』(カプコン)では徳川と敵対関係にある石田三成サマが大人気のため、歴女を皇居デートに誘うときは事前にアンチ徳川でないか確認した方が無難だとか。
●歴女のためのデートスポット3 戦国ブランドショップ”もののふ天守”
新宿三丁目、寄席で有名な末広亭近くの雑居ビルに、戦国ブランド”もののふ”の直営店がある。土・日・祝祭日のみの限定営業なので注意。茶々・初・江の浅井三姉妹Tシャツ(3,990円)が売れ筋商品らしい。
歴子「2011年には大河ドラマの記念すべき50作目『江~姫たちの戦国~』の放送も決定して、これから浅井三姉妹の注目は確実に高まります」
ちなみに「浅井」は「あざい」、「江」は「ごう」と読む。正しく読めました?
●歴女のためのデートスポット4 名将料理いくさ飯”個室乃世 大河の舞”
新宿東口、伊勢丹並びのビルに入っている戦国風居酒屋。エントランスに鎮座する信玄・謙信の鎧兜がものものしい。席に向かう途中「危ない!」と叫ぶ声に身をすくめると、向こうからやってきた悪の侍と、案内してくれていた侍(どっちも女性店員)が斬り合いを始める衝撃の展開に。曲者を斬り倒してようやく席へ通される。隣のテーブルに着いていた女子ふたり組は、直江兼次×上杉景勝のカプ萌え(編注:カップリングで萌える)話でひたすら盛り上がっていた。歴女にはそういうパターンもある。
一日の取材を通してよく分かったことだが、歴女というのは語る機会のない面白い話をたくさん抱え込んでいて、いったん堰を切ればとめどなく話し続ける。もし、あなたが歴女と近づく機会を得たときは、彼女に気持ちよく歴史トークさせるためのお膳立てをしてあげよう。距離はググッと縮まるはず。
(取材・文=瀧昌臣)
◆東京国立博物館ウェブサイト
◆宮内庁皇居施設情報サイト
◆戦国ブランドショップ”もののふ天守“
◆名将料理いくさ飯”個室乃世 大河の舞“
好きこそ物の上手なれ! 的な