アメリカ社会にはびこる心の病のひとつに、「セックス・アディクション」というものがある。
これは単純に訳すと「セックス中毒」。
インターネットで意味を調べると、こう書いてあった。
「セックスに関する異常なまでの興味や強迫観念と、それに関する行為が普段の生活を困難にし、家族や友人に多大なストレスを与え、仕事に悪影響を及ぼしたりする場合をセックス中毒と呼ぶ」
つまり、セックス中毒とは、連続的に他人とセックスをするという行為だけに限るわけではなく、インターネットでポルノを見てばかりいるとか、サイバーセックスに明け暮れている、というのもその範疇に入るのである。そして、そんな症状が自分でコントロール出来なくなる場合、その人は中毒患者と認定され、セラピーを受けなければならない場合も出てくる。
健康な人間ならば誰にでも性欲や性に対する興味は存在するものである。アダルト出会い系サイトに登録する人々がすべてセックス中毒だとはもちろん限らないが、このようなサイトに登録する人々のプロフィールに「フェティッシュ(フェチ)、グループセックス、スワッピングに興味あり」などと書かれているのを見ると、やはり「普通に1人の男性または女性と出会い恋愛関係になる」という一般的な道を行く大多数の人々と比べると、彼ら、彼女らはセックスに関する興味や欲望が人一倍強いのだろうと推測せずにはいられない。
しかし、この「普通」と「異常」の線を越えるのは、わりと軽いきっかけであるのかもしれないのだ。
アダルトサイトを使って一夜限りの情事を繰り返していたごく普通と思える女性の話である。
「大学を卒業して、仕事やアパートを見つける必要があったときだったわ。今まで生きてきた中で一番退屈で、いらいらしていた時期だった」現在25歳のジェシカはこう言っている。
ある夜、アメリカ最大のインターネット掲示板である「Craigslist.org」を見ていた彼女は、アパート探しの欄を閉じ、「カジュアルな出会い」の欄をクリックした。彼女の転機は、一瞬の判断で訪れたのである。
「友達は皆この欄を使って男性に会っていたけど、私はそれまで勇気がなかった。でも、私だって出来るはず、とそのとき思ってしまったのよ」
彼女はその掲示板に一夜のセックスを探すあからさまなメッセージを出し、その後メッセージを送ってきた男性の中から一人を選ぶと、その夜のうちに会ったという。
「こんなことをしている自分が信じられなかったけど、これはオンラインデートの一種なんだって自分に言い聞かせたの。ただ、もっと狙いがはっきりとしてるだけ」
男性が一夜の情事を探しているケースは日本でもアメリカでも珍しくもなんともない。しかし、いわゆる「普通」の女性のケースに限って言えば、そんな意思を表に出すのは精神的にも肉体的にも、リスクの伴う行為である。女性にはとかく社会のダブルスタンダード(男には許されるが、女には許されないという考え方)がつきまとうし、性病、妊娠、犯罪行為のような危険な状況に巻き込まれることも考えられる。冒険をしてみたくても、一般の女性はなかなか踏み出せない場合がほとんどではなかろうか。
しかし、インターネットの革命的進化がそれを変えつつあるらしい。つまり、映画『ミスター・グッドバーを探して』に出てくる女性主人公のように、バーで直接相手の男性を探す必要がなく、相手の容姿や年齢などのバックグラウンド、連絡先もある程度は事前に分かることから、アダルト系サイトを利用する女性たちは、この気軽さをまるで性の革命であるかのように扱っているらしいのである。そして、利用者数が増えれば増えるほど、そこに罪の意識がなくなっていくのは人間の集団心理としかいいようがない。
(文=相馬 佳)
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