ロリータ・コンプレックス、すなわち広い意味での少女に対する性的欲求、または愛玩的嗜好を持つ傾向は、イレギュラーな欲求としては非常に数多く存在すると言われており、同時にその範囲や種類も極めて多岐にわたる。平たく言えば、「ロリコンは大勢いる」ということであり、そして「一口にロリコンといっても多種多様である」ということになろう。
だが、これまでその「ロリコン」について、マニアックな雑誌や学術的な研究書はあるものの、トータルにとらえた評論やレポートは皆無という状態だった。著者の高月靖氏は筆者のインタビューに、執筆のきっかけについて「少女愛やアニメヒロインといった個別のテーマでは著作があるのに、ロリコンを総合的に扱った本が見当たらなかったこともそのひとつ」と述べている。
この10月7日に刊行された『ロリコン 日本の少女嗜好者たちとその世界』(バジリコ・1600円・税別)は、おそらくわが国のロリータ・コンプレックスの状況について書かれた最初の本格的なルポではないかと思われる。 内容は、ロリコンについての基本や種類について触れた後、80年代以降のロリコンブームの概要に始まり、それに関係する要素としての「オタク」や性的虐待、援助交際などにも、その関係性や無関係性=誤解や幻想についても言及している、幅の広い内容となっている。
同書では数多くの文献や資料にあたり、その全容について解明を目指す。また、単なる資料探索にとどまらず、ロリコンブームなどを担った作家やクリエイターなどにもインタビューを試み、その内容をより充実したものとしている。
ひと口にロリコンといっても、その種類や関係は非常に多岐にわたり、かつ複雑だ。高月氏もインタビューで、「ロリコンを起点にたどっていくと、マンガやアニメ、ゲーム、アイドルなど、実に多くの接点が存在することが改めてわかる」と述べている。そうした多くの接点を、同書では丹念に探り検証を試みている。そのため、あるいは同書の構成が煩雑という印象を受けるかもしれないが、それはロリコンというファクターの持つ複雑さ、あらゆる接点が存在する多様性と理解できよう。
さらに、最近の児童関係の問題について、高月氏は「数字のまやかし」や「規制と利権」についても指摘する。
「たとえば児童虐待についてですが、行政などから発表された数字を見ると、その数は右肩上がりに増えている。でも、さらに遡って調べてみると、もっと日本が貧しく混乱していた時期のほうが、幼少者への暴力は多かったことがわかります。つまり、行政の相談窓口が増えて、さらに社会的に注目されることによって、表面化する件数が多くなっただけという気がします。それから、規制が増えればそれにかかわる人員や関係機関も増える。そんな構図が、取材を進めるうちに見えてきたりもしました」(高月氏)
最後に高月氏に、では「ロリコン」とは何かと聞いてみたが、「ひと言では表現できません」という答えであった。
構想から取材、執筆まで1年以上を要した285ページに及ぶ労作である。
(橋本玉泉)
『ロリコン 日本の少女嗜好者たちとその世界』高月 靖 (著)/バジリコ
ロリとペドは大きく違う