『涼宮ハルヒの消失』映画化も、進むファン離れ現象

『涼宮ハルヒの憂鬱4 笹の葉ラプソディ』

 
 この夏、同じストーリーを8回放送し、さらにそれをDVDに各2話ずつしか収録せずに売り出したことで大きな波紋を呼んだ『涼宮ハルヒの憂鬱』。今年4月から新作と旧作をミックスする形で放送されていた「2期」が10月8日ついに放送を終了した。そのエンディング終了と同時に、映画『涼宮ハルヒの消失』(以下、『消失』)を2010年春の公開に向けて制作中であることが発表された。

 この発表直後からネット上では

「映画化は素直にうれしい」
「おめでとうハルヒ」
「特報の文字が出た瞬間、心臓がキュッとなったwやべーーーー」

 など喜びの声とともに、「映画化なんてしちゃって、大丈夫なのか?」という懸念も上がっている。

 既報の通り、2期のハルヒについては『エンドレスエイト』問題をめぐって反感の声が高まっていた。『消失』は原作ライトノベル第4巻の長編作品であり、ハルヒシリーズの中でも”最高傑作”と謳われるほどファンの間では人気の高いストーリーであるが、そもそも2期のテレビアニメで放送されるものと予想されていた。そのため、制作サイドが意図的に8回も『エンドレスエイト』を放送したのは、『消失』を劇場版用に取っておき、メディアミックスによるさらなる旨味を狙っているのではないか、という声も聞こえる。

 だが、必ずしも「映画」という展開が利益を生むとは限らない。2006年に放送された1期の主題歌は6万枚以上を売り上げたが2期は3万4000枚。キャラクターソングなど関連CDでは1期の『涼宮ハルヒの詰合』が14万枚強というセールスを記録しているが、2期に伴って発売された関連CDは売れ行きの良かったものでも1万枚強という状況に落ち込んでいる。『エンドレスエイト』問題の後遺症とも言える”ファン離れ”が加速していることは否めない。2期の放送中も、アニメファンの間では『化物語』『けいおん!』など新作アニメが盛り上がりを見せ、ハルヒ人気にもかげりが見え始めているのだ。今回の映画化発表を受けて一部では「涼宮ハルヒの人気の消失」と揶揄する声も上がっている。

 また、2期アニメに脚本で参加していたライトノベルの原作者・谷川流も、当初は2007年6月1日に発売予定だった新作『涼宮ハルヒの驚愕』(予定)を、かれこれ2年以上も発売延期にしたままとなっており、その存在すら忘れられてしまいそうだ。

 2009年の夏は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』『サマーウォーズ』という2本の劇場用アニメ映画がヒットを記録したとともにそのクオリティも高く評価されており、アニメファンの作品を見る目も一段とシビアになっている。無料で見られるテレビアニメとは違い、わざわざ映画館へ足を運び、大人であれば1800円のチケット代金を支払わなければならない劇場用アニメであるからこそ、これまでファンを失望させた分を取り返すつもりで制作してほしいものである。

 

『涼宮ハルヒの消失』角川書店

 
ともあれ名作


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