みんな大好きおっぱいおっぱい。赤ん坊の視線で捉えた芸術的おっぱい写真集『BREASTS』

『BREASTS』伴田良輔(著)/朝日出版社

 巨乳、爆乳、微乳に美乳、釣り鐘ハト胸下垂型、つるぺたロケットスイカップ――、一口に”おっぱい”といっても色々あるが、どうあれ、みんなおっぱいが大好きなことに変わりはない。柔らかく温かなおっぱいに触れば心が安らぎ、観ているだけでも幸せな気分に包まれる。

 この『BREASTS』は、20~30歳前後の、総勢21名、全46対の美しいおっぱいを撮影した写真集だ。ツンと上向きのおっぱいや、掌サイズのかわいいおっぱい、ド迫力の豊満なおっぱいは、それぞれ個性豊かで芸術的。観る者を天国へと誘うような、楽しいおっぱい絵巻といえる。ファインダーからわずか30cmの至近距離で観るおっぱいは圧倒的存在感、健康的で、いやらしさは感じられない。

「乳房は掌のために造られた 掌は乳房のために造られた」

 写真の横には、堀口大学ら、著名な詩人の”おっぱい”詩が添えられ、被写体の魅力をより一層引き立たせている。雪のような白い肌に浮き出る血管、ほくろが映え、乳頭が桜色に染まる。双丘はなだらかな稜線を描き、ブラジャーの跡が赤いシュプールを残す。毛穴や、わずかに生えたうぶ毛も、あますところなくフィルムに収められている。

 男性がおっぱい――特に巨乳や美乳を好むのは、その形状がお尻に似ているため=大きいお尻は安産のしるし、という説や、おっぱいの形状がよい(シンメトリーに近い)女性ほど子どもをよく産む、という説があるが、真偽のほどは定かではない。元来、大きさ、色、形など、言葉を持たない赤ん坊にとってはおそらく無意味なことだ、と著者の伴田氏は語っている。中には、茶色い乳首や大きい乳輪など、一般的に敬遠されがちな色・形のおっぱいもあるが、どのおっぱいも綺麗で、味わいがあり、持ち主の女性のそれぞれの感情が息づいている。

「ボインは赤ちゃんが吸うためにあるんやで~」と月亭可朝は歌う。嘆きのチチたちも、目の前の乳房にむしゃぶりついた赤ん坊のころに帰って、安らぎのひとときを過ごそう。
(文=平野遼)

 
伴田良輔(はんだ・りょうすけ)
京都生まれ。美術から数学まで、エロスからサイエンスまで、さまざまなジャンルを横断する。著書に『独身者の化学』『絶景の幾何学』『奇妙な本棚』『猫語練習帳』ほか多数、写真集に『鏡の国のおっぱい』『エロティッシモ』ほか、訳書にカレル・チャペック『ダーシェンカ』、H.E.デュードニー『カンタベリー・パズル』などがある。独自の技法による版画家としても活動している。ログドラム奏者。

 

『BREASTS』伴田良輔(著)/朝日出版社

 
被写体は一般から募集した21人の女性。


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