『上京物語 山形からきたHカップ純情娘』

「カメリアコンプレックス」。それが本作のテーマだ。不幸な女性を救い出したくなる心情や行動のことを言うらしいが、はたしてこの作品がそれにあたるのかどうか……。最初は半信半疑だった。上野駅で途方に暮れる一人の田舎娘に出会うシーンからスタートするのだが、彼女が救済を求めていたかといえばそうではないようだ。

「受験のために初めて東京にきたんですけど、友達と連絡がつかなくて……」

 彼女の手には小さなカバンがひとつ。すっぴんのまま駅の周辺をうろうろする姿はあまりに無防備。とはいえ、見知らぬ男に声をかけられ警戒心は解いていない。しかし、たった一言から彼女の顔が変わった。男が知り合いのメイクさんに連絡をして、綺麗な化粧をして新しい服を着せてあげようと言ったのだ。不安で硬直していたほほが一瞬で明るくなった。そして、メイクが完成し見違えるほどきれいになった自分をみてまんざらでもない顔をする。都会娘になったつもりなのだろうか? 男がイヤらしい質問をしてもさほど気にしていないような態度を取り始め、ホテルでセックスをしよういっても慌てることはなかった。彼女の中の都会娘のイメージがきっとそれなのだろう。ただ、抜けるような白い肌と汚れのない美巨乳だけが、薄暗い部屋のなかで白々と浮いてみえた。

 感度はいいようだ。激しく胸をもみしだかれると甘い声で喘ぎ始めた。そんな彼女を見て男は──セックスをしたことで彼女との距離を感じた──という。たしかにそうだ。さっきまで誰かに救いを求めていた彼女ではなかった。その後、男の提案で目隠しプレイが始まり、新しい男がそこに加わる。彼女は何を感じていたのだろう。最後にザーメンまみれの顔で言った。

「もう帰りたい……友達のところに行きます」
絞り出すような小さな声は後悔と恐怖のためか震えているようにも聞こえた。

 これがカメリアコンプレックスなるものの結末? 男の想いはそう簡単には女には届かないということか。だが、最初に感じた不信感は消えた。これは偽善ではない。強引なナンパとも違う。東京という窮屈な空間の中、なんとか寄り添おうとする男と女のぎこちない出会いを描いた歪められたストーリーなのだ。結果、冷めた人肌に絶望する男が、必死にエロスにすがりつこうとする切なさに満ちた作品となった。人を救いたくなる衝動は、自分を救いたい時にこそ強く生まれるのだと、あらためて思い知らされた。AVを見て、こうも人肌恋しくなるとは。ちょっと癖になりそうだ。
(AV評:文月みほ)

上京物語 山形から来たHカップ純情娘

◆メーカー:グローリークエスト◆品番:ETC-16◆時間:120分◆価格:3780円

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