ネットに溢れる「ダウンタウン終了」の声 それでも揺るがない地位と弱点

akankeisatu0906main.jpg※イメージ画像:フジテレビ系『爆笑 大日本アカン警察』オフィシャルサイトより

 フジテレビの2013年秋の改編情報が発表され、ダウンタウンがメインを務める『爆笑 大日本アカン警察』が終了するがわかった。10日には、『リンカーン』(TBS系)の最終回を迎えるダウンタウン。こうしたニュースを受けて、ネット上では、「ダウンタウン終了w」「企画倒れ」「当然の結果」などといった声が聞こえてくる。中には、「コントが見たい」「トークだけでいい」などと、ダウンタウンを擁護するようなコメントも見られるが、概ねユーザーたちの反応は厳しいものとなっている。

 とはいえ、『アカン警察』も『リンカーン』も、その後番組には、ダウンタウンをメインに据えたバラエティが放送される予定。フジテレビではタイトル未定ながら「ダウンタウンならでは、かつ、まったく新しいスタジオバラエティ」といった番組が、TBSでは単発特番として過去に放送されている『100秒博士アカデミー』という知的情報バラエティが放送される模様だ。共にスタジオ収録の企画番組となっている。

「今のバラエティ界には多くの人気芸人さんがいますからね。それぞれに特徴があって、支持する層も違います。たとえば、パンサーのファンとブラマヨのファンではぜんぜん違いますよね。ただ、番組とすれば、できるだけ多くの視聴者に見てもらいたいわけで、そうしたファン層の違う芸人さんをうまく組み合わせて共演させ、数字につなげようとするわけです。そこで重要になってくるのがメインを務めるタレントの存在です。特にゴールデンタイムでは、より視聴者層を広げることが重要ですからね。超大御所から若手アイドルまで満遍なくフォローできるタレントでなくてはならないということです。つまりそれがダウンタウンという存在なのです。

 当然ながら後輩芸人からも慕われていますし、彼らより年上の芸能界の先輩たちからも一目置かれていますからね。もちろん彼らも大御所といえる立場にいますが、彼らよりもっと長く芸能界で活躍している人たちはいますから。若手と大御所の間で絶妙に立ち回り、笑いを取れるMCといえばダウンタウンの右に出るものはいませんよ。さまざまな芸能人を起用したいと考える制作サイドからすれば、ダウンタウン以上に使えるMCが見当たらないのが現状なのだと思います」(バラエティ番組放送作家)

 昨年デビュー30周年を迎え、芸能界の頂点に君臨して久しいダウンタウン。だが、冒頭に記した2番組に加え、昨年12月に『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ系)が終了したように、彼らの番組は相次いで打ち切りという状況が続いている。いずれの番組も視聴率の低迷が招いた結果といえる。だが、それでもテレビ局はダウンタウンを起用する。その理由は、先ほどの放送作家が述べたように、彼らが大御所にもツッコめ、若手もおいしくするといった、全方位型の芸人だからだろう。しかし、果たして以前からそうだったのだろうか。

 たとえば、松本人志監督最新作『R100』の公開を記念して、10月2日にBlu-ray化されて発売される、1994年に行われたコントライブ『寸止め海峡(仮題)』は、入場料1万円という挑戦的なものだった。「演者が客を選ぶ」「この天才の笑いについていけるか!」と銘打たれたライブの内容は、当然ながら挑戦的で、延々と男が男を引っ張るなど、お世辞にも誰もが笑えるものではなかった。しかし、そうした松本の態度こそ笑いのカリスマたるゆえんだったはず。誰にも媚びず、自分が面白いと思うことだけに取り組んできた松本。だからこそ彼は数多いる芸人の中で頭角を現し、テレビバラエティ界のトップに君臨することができた。

 だが、そのことが彼らのバラエティでの立場を窮屈なものにしてしまった。テレビ局は、松本の先鋭的で挑戦的な笑いより、芸人のトップに立ったという現実に目をつけ、ダウンタウンを起用することで、さまざまな芸能人をバラエティに引っ張り出すことに執心した。若者から絶大な支持を受け、芸能界の大御所連中からも一目置かれたダウンタウンは、テレビ局にとって、誰よりも使い勝手のいいタレントとなっていった。

 きっと新しく始まる彼らの新番組にも、あらゆる世代の芸能人がゲスト出演することだろう。そして、ダウンタウンの2人は、どんなゲストにも対応し、笑いを生むだろう。だが、果たしてそれはダウンタウンにしかできないことなのだろうか。彼らの下には、千原ジュニアや小藪千豊といった、ツッコミもボケも万能なトークのスペシャリストがいる。知名度も十分で、物怖じしない姿勢は大御所たちにも通用するに違いない。そんな彼らが、番組を仕切ってみるのも面白いのではないだろうか。そこにダウンタウンがゲストとして登場するなどすれば、きっとそこでは思いも寄らぬ化学反応が生まれるに違いない。そしてそれこそ新世代の笑いとなるだろう。

 だが現実を見れば、まだまだダウンタウンが司会というのは揺るぎない。少なからず、そこにはいわゆる“大人の事情”のようなものがあるのだろう。しかし、かつてダウンタウンは、自分たちの番組『ごっつええ感じ』(フジテレビ系)が“大人の事情”でプロ野球放送に差し替えられたのをきっかけに番組を降板したといわれている。いちファンとすれば、そんな尖ったころのダウンタウンが懐かしい。

 今ではテレビ局の都合でたらい回しにされている印象すらうかがえるダウンタウン。今後、彼らが視聴者に挑戦状を叩きつけるかのような独善的な笑いを生むことはあるのだろうか。松本にとっては、それが映画という新しい表現世界になるのかもしれないが、ダウンタウンによるダウンタウンのためのテレビバラエティというものに、もう一度触れてみたい。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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