and Rocket from flickr
昨年、自身がリーダーを務める大人気ロックバンドを突然解散し、世間の注目を集めたシンガーソングライターのS。彼女のかつての恋人だったと証言する男性に出会った。現在、都内某ファミレスで店長をするY太さんだ。
以下、Y太さんの証言。
10年以上前ですね。僕は当時アマチュアバンドを組んでいて、アルバイトでなんとか生計を立てるフリーターでした。僕のバンドのライブ後の打ち上げで、なんとSが来ていたんです。Sはその頃メジャーデビューしたばかり。世間的にはまだまだ認知度は高くありませんでしたが、音楽をやっている人間にとっては既に有名人でした。
まさかの有名人の登場に皆は浮き足立っていましたが、僕は正直、彼女と話そうと言う気持ちにはあまりなりませんでした。Sがソロデビューのためにバンドを解散させて上京したという話は僕も知っていたので、バンドマンとして良い気持ちはしていませんでしたからね。
でも、ビールグラスを片手に静かに佇む彼女と不意に目が合って、
(あ、これはどうしてもこの子と話さなきゃいけない…!)
そう思ったんです。やっぱり、あの頃からSのオーラみたいなものはすごかったですよ。直接話してみて、僕らはすぐに打ち解けました。
デモテープを送り続けた苦労時代もずいぶん長い彼女は、僕の相談に本気で耳を傾けてくれました。本人も気にしていたようですが、Sはひどく人見知りをするので、クールな見た目とあいまって、冷めた人間と思われがちです。でも実際はそんなことはなく、いたって普通の女の子ですよ。打ち上げの終わり際「次は2人で会いたい…」と言ってくれたのは、Sでした。
身体の関係は、すぐに始まりました。僕はその頃びっくりするくらい貧乏でしたが、Sはそのことをきちんと理解してくれて、「お家でデートしよう」そう言ってくれたんです。それで、初デートでH。後ろから突いていて、Sがこっちを振り返ったときに見えるホクロがセクシーでね。ホクロは何年か前に取っちゃったみたいですけどね。
あとは…性癖もね、うん。彼女がドMだということは、今ではだいぶ知られているみたいですけど、当時の僕は知る由もありませんよ。最初はたいしたことはないです。手を縛ったり、目隠ししたり、簡単な要求ばかり。でも、だんだんとエスカレートしていってね。そうそう、乳房を思い切り噛んでくれって言われたときは参っちゃったな(笑)。
僕と付き合って少し経つと、彼女の曲が大ヒットしました。それでだんだんと会える時間がなくなっていって、自然消滅です。いや、ちゃんとフられたんだった。「別れましょう」って。辛かったなぁ。
以上、Y太さんの証言。
Sはその後結婚するも、やがて離婚。そんな彼女を、Y太さんは遠くからどんな目で見つめていたのだろうか。「ホクロはあった方が良かったなあ…」感慨深げに呟きながら、彼は帰って行った。
(取材・文=ウッド・マーラー川上)