公式サイトより
ナインティナインの矢部浩之(41)と現在フリーアナウンサーで元TBS女子アナの青木裕子(30)の結婚披露宴を生中継した『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)が、平均視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)で20%を超えたとして話題を集めている。
直前に結婚を発表した矢部を祝福して、『めちゃ×2祝ってるッ! 矢部浩之・裕子結婚披露宴生放送スペシャル』と題されたこの日の放送。結婚秒読みといわれながらこれまでゴールインしなかったカップルだけに、ニュース性も抜群で、同番組では昨年の1月に放送された「もうデブザイルとは言わないでSP!!」以来となる20%超を記録した。
とはいえ、3月27日に婚姻届を出して、4月6日に披露宴を生放送という段取りでは、さすがに内容に限界があった。そもそもこの日の放送は、AKB48による期末テストSPが予定されており、披露宴中継といっても、会場を見つけることすら難しかった様子。何とか『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ系)が余分におさえていたスタジオを利用することで、突然の生放送も成立したという。
そんな急場しのぎの放送では、当然のように、中身を仕上げるのは難しかったようで、ゲストにエスパー伊東(48)やにしきのあきら(64)などの『めちゃイケ』ゆかりのメンバーを揃えるも、大物の出演というのは叶わなかった。唯一、大御所といえば西川きよし(66)が矢部の上司的立場で出演したが、大きなインパクトを与えることはなかった。
先日放送された『みなさんのおかげでした』(フジテレビ系)での飯尾和樹(44)の披露宴では、大掛かりなドッキリや番組名物の落とし穴などがあり、また、ビートたけし(66)のサプライズ登場&歌披露といったスペシャル感満載の演出があった。しかし今回の矢部の披露宴は、ニュース性に大きく頼っており、ナインティナイン・矢部と青木裕子というビッグカップルの披露宴にしては、少し寂しい印象が残る中身だった。
もちろん、その要因は、あまりにも急だったということにつきる。むしろ1週間という時間で、タモリ(67)や爆笑問題をVTRで出演させ、矢部と青木の馴れ初めをドラマ仕立てに落とし込んだことは、さすがと言うべきかも知れない。しかし、最終的には『めちゃイケ』特有の感動シーン(ナイナイによる心のパス交換)を演出し、その後に江頭2:50(47)を出演させて大オチをつけるというやり方は、既視感たっぷりのものだった。ファンにとっては「これじゃなきゃダメだよな」という定番とはいえ、パス交換と江頭というシナリオは演出の放棄のような気がしてならない。とりあえずこれだけやっておけばいいだろう、もしくは、後は演者に任せた、というような演出といわざるを得ない。
しかしなぜ矢部はこんなにも急に結婚を決めたのだろうか。ひと月でも前に番組スタッフに話していれば、それこそ飯尾の披露宴以上に大規模な番組ができただろう。結婚発表の時期などをうまく利用すれば視聴率としても今回以上だったに違いない。なぜ矢部はそうしなかったのか。
やはり矢部にしてみれば、番組云々というより相方である岡村隆史(42)に花を持たせたかったのだろう。それは矢部が結婚を公にしたのが岡村のネット放送初日だったことから推察できる。常に岡村の前ではどこか控えめであろうとする矢部は、自分のプライベートを番組で大々的に取り上げることを良しとしなかったのではないか。もちろんどこかで公式に発表はしなければならない。そこで彼が選んだのが岡村のネット放送だったわけだ。そこには、誰よりも先に伝えなければいけないという思いがあったのだろうし、また、自分のプライベートなネタをささげるのは相方しかいないという強い気持ちがあったのだろう。
それでも矢部は義理を果たすため、婚姻届を出すところは『めちゃイケ』スタッフに連絡し、カメラを回させた。その結果が、今回の急な披露宴中継につながるわけだが、矢部とすれば考えてもいなかったことだろう。むしろ避けていたのかもしれない。しかし番組は中継を断行した。そこにはスタッフたちの矢部への気持ちが強く反映されている。もちろん低迷するフジテレビの思惑というものもあっただろう。ただ、そんな周囲の思いより、今回の放送では矢部の岡村に対する愛情とスタッフに対する義理が色濃く出ていた。あまりにも準備期間の短かった番組は中途半端だったが、矢部の心意気が垣間見えた披露宴中継だった。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)