【奇女のホンネ】IKKOさんに「妹」と呼ばれたオネエな慶應ボーイ

toyamasan02.jpg高学歴オネエのtomさん、女装時のお姿

 「人生のモラトリアム」とも言われる大学時代だが、世の中には非常に多くの女子大生がいる。そのなかでも、“奇”麗であり“奇”想天外、他とは一風変わった女子大生。そんな「奇」女子大生の生態を紐解いていこうというのが、本連載のテーマである。

 今回の取材相手は、慶應義塾大学3年のtomさん(@toyamarudasi)。連載初の男子大学生の登場だ。彼はゲイであり、イラストレーター/グラフィックデザイナーでもある。

──お聞きしたいことが山ほどあるのですが、まずどういった経緯で今の「ゲイ」という姿があるんでしょうか。

tom:小さい頃からミカン箱の上で「ジュリアナ東京~♪」みたいなダンスを踊るような子供でした(笑)。それでも元々は女の子と付き合ったこともあったし、自分が男性を好きになるなんて思ってもいなかったんですよね。

 たぶんきっかけは小学校5~6年のときですね。周りに感化されて『週刊少年ジャンプ』(集英社)が読みたくなって、おなじみのキャラが表紙に踊り輝いているジャンプを買って意気揚々と家へ帰ったわけですよ。袋を開けてジャンプジャンプ♪と思っていたら、全然違うわけですよ! 中身が! 表紙は確かに見たことのあるキャラなんですけど、『ジュニア』っていうBLの同人誌だったんですよ! それで「あぁ、こういう世界もあるんだ…」って思って。その後お母さんに見つかったんですけどね。「机の中にあった本…何?」って。「面白そうだったし」っていう世にも苦しすぎる言い訳をしました。

 それから高校生になって、その後も女の子と付き合ったりしていたんですけれども、ある男の先輩のことが気になり始めて…。その人のことが大好きになっちゃったんですけれど、向こうもそう思ってくれてたみたいで。でも、お互い男性のことを初めて好きになって、どうしていいかわからなかったんでしょうね。悩んだ結果、私がその人のことを大切にしようと決心したときには、彼は女の子との人生を選んだんです。それで加藤ミリヤもびっくりなくらい病みに病んで。毎日泣いて、ご飯も食べれなくて、食べても吐いて。それを繰り返して、やっと吹っ切れて…はい、クソガマの出来上がりです。

──プロフィールに「IKKOさんから妹認定を受けた」という部分がありましたが。

tom:これはゲイの友達と韓国に行ったときの話ですね。ちょっと先にIKKOさんじゃなくて巨根の話していいですか?

──どうぞ。

tom:韓国に到着したのが夜の11時半で、空港から1時間かけてソウル駅までバスで向かったんです。韓国にはイテウォンとチョンノってゲイタウンがあるそうなんですけど、イテウォンはクラブもたくさんあって、外国人街で夜遅くまでお店が開いてるってことで、イテウォンに行くことにしたんですね。何も泊まるところを決めていなかったので、安いモーテルに泊まることにしたんです。ただのラブホテルだったんですけどね。

 部屋に荷物を置いて、さぁ飲みに行くぞってタイミングで部屋の鍵をなくしてしまって。友達が玄関のドアを開けて待っている状態で、床にはいつくばって私が鍵を探してたら、「何あれ…」って友達が恐怖に震えた声を出すんです。何のことだかわからなかったけど、初めての海外だったし私も怖くなって「ヤダちょっとやめて、ドア閉めて」って言ったのに…気づいたら友達の背後に、190cmくらいの黒人が立ってたんです。もう死ぬほど怖くて「刺されて死ぬ!」と思ったんですよね。よーくみると、タンクトップにパンツ一丁で立ってたんですけど、アダム(隠語)がボロンと出てたんですよ! しかもギンギンのモノが! もうね、「挿されて死ぬ!」と。

──どっちにしても死ぬ!っていう。

tom:その方が野太い声で「マンコどこや?」と訊いてきたんです。友達も私も腰を抜かして、これでもかってくらい目を見開いてたと思います。でも友達が「ないの! ここには(マンコは)ないの!」って叫んで扉を閉めて、一命は取り留めました。恐怖で5分くらい立ち上がれませんでした。

──女性だったら危うくレイプされてるところでした。チンコ狙いじゃなくて幸運だったのでは。で、IKKOさんはいつ出てきます?

tom:韓国旅行の最終日! 他にもいろんなエピソードがあって、友達と「今回うちらマジ引きよすぎだし、街歩いてたらIKKOさんとか会えそうじゃない?」って話しながらミョンドンの街を歩いてたら、本当にIKKOさんがいたんですよ! うちらテンションぶち上がって「IKKOさ~ん!! せんぱ~い!!」って叫んで近寄ったら、IKKOさんもノッてくれて「妹~!!!」って呼んで握手してくれて。肌くっそ奇麗でした。めっちゃ手にいいにおいついたし。「女だ…」って言うのが率直な感想ですね。だから妹認定というとちょっと大仰ですね。帰って来てFacebookとか見ると、韓国に行った友達が、「東方神起に会った!」とか「少女時代と飛行機同じだった!」とか言ってるわけですよ。「うちらだけ何で巨根の黒人とIKKOさんなんや…」って自分たちのネタ体質を呪いましたよ。

──(笑)。ちょっとカタめな話に移るんですが、現在はどのような活動をされているのでしょうか。

tom:今はイラストやグラフィックなどのクリエイター活動をしています。それと並行して、LGBT(※)を含めた全てのセクシュアリティの人たちのためのブライダル事業を起こそうと考えています(詳細はコチラ)。パートナーシップが認められないということって色んな困ることがあるんですね。ただ感情論で結婚を認めろっていうだけじゃなくて。そういった結婚して終わりではなくて、弁護士さんともお話しながら、パートナーシップを認められない人たちのライフプランニングやサポートを含めた形でのサービスを考えています。
(※LGBT:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々をまとめて呼称する頭字語)

──なるほど。イラストなどの作品にレインボー(虹色)がよく使われていると感じたのですが、それにはLGBT的な意味合いが込められているのでしょうか?

tom:そういった見方を直接おっしゃっていただいたのは初めてですね。意識としてそういう意図はないですね。私はとても寂しがり屋なんですよ。大好きなものに四方から囲まれてると安心するんでしょうね。最強の防御と最強の攻撃は紙一重ですし。そういう「集中と放射」は私の作り方には多いかなと思います。

 あまり短絡的なJOY!とかHAPPY!という表現は、私が絵に描いてもどうしようもないんじゃないかと思うんですよね。そういう絵もありますけれど。それぞれの絵にテーマはあるんですけれど、どれも自分のブサイクで醜い部分をテーマにしていることが多いんです。自己満のオナニーですよね。それで、私は吐き出す対象が絵だった。絵で説教はしたくないですね。ですから、自分からそういったメッセージをのせることはあまりないですね。

toyamasan03.jpgtomさんの作品「時代」。

──では、社会に対してメッセージ・怒りなどはありますか?

tom:うーん…。強いて言うなら、適切な議論をしなさいよ、と思います。全員がそうと思っていないですが、日本人って、議論を嫌がる人が多いじゃないですか。大人は協調が大切だとか言って。議論で論破することを、人格の否定と勘違いしている人が多すぎるように思います。議論って感情がベースになることもあると思うんですけれど、どうやってその違和感とか気持ち悪さを紐解いて相手に伝えられるか、というところだと思うんですよね。一人が我慢すれば済む問題ではないことの方が多いんですよ。同じことを思っている人って意外とたくさんいるから。

 白黒はっきりする問題ばかりではない。グレーゾーンの中に名前の付けられない事柄がいっぱいあるわけじゃないですか。言ってしまえば私ってそういう男とか女とか単純な二元論で語れない場所にいるわけだし。それを言葉にして相手に伝えて、理解はできないけれど受け入れますよ、その上で今ここにある問題をどうやって解決しますか、というところから本当の多様性を受け入れるということがスタートすると思うんですよね。

──なるほど。ご自身の潜在的な思いがこもっていそうですね。では最後に、今後のご活動の方向性について教えて下さい。

tom:私の活動の軸は、2つあって、アイデンティティに関わることとクリエイター活動ですね。アイデンティティに関わることというのは、主にLGBTの活動ですね。先述のブライダルもそうですし、将来のことを考えると不安もあります。この関係で様々な人とお話させていただいたので、これからはブライダルの事業でも自分たちから発信していきたいと思います。ブライダル事業では、春から夏にかけてくらいの間にシミュレーションブライダルを考えているので、まずはそれにむけて準備を進めていきたいですね。

 クリエイター活動では、今までのように絵を描き続けていきたいですね。例えば、自分のキャラクターをTシャツにしていけたらなぁと思います。あと、歌とかダンスとかパフォーマンスが好きなんですけど、絵って整合性がないんですよね。事後承諾的というか、絵を描いていることって静的でなかなかパフォーマンスに直結しない。それをもっと動的にしたいんですよね。今後は色んなクリエイター活動をしている人たちと、音楽や映像、ステージなどを組み合わせた表現に挑戦してみたいですね。私の周りには素敵なパフォーマーの人や音楽家、クリエイターがたくさんいますから、そういう人たちと作品を作りたいですね。

■tomさんポートフォリオサイト http://tomfolio.me

(取材・文・撮影=くわ山ともゆき/http://kuwapedia.com

men's Pick Up