著:実践性科学研究会/データハウス
何のためにあるのか、その存在意義がよくわからないものがある。例えば、ごく短い距離にある横断歩道。ときどき、テレビで珍名所として紹介されているのを見たことがあるだろう。また、多額の税金を費やした割にはほとんど使用されていない公共施設の存在にも首を傾げてしまう。
人間の身体で言うなれば、尾てい骨や親知らず、盲腸などが挙げられる。我々の祖先の時代は何らかの役割を果たしていた器官かもしれないが、進化の過程で機能を失い、カタチとしてだけ残っているのだろう。男性の乳首や女性のクリトリスも同様に捉える説もあるが、それらはむしろ副産物というニュアンスが強い。生物学上は必要ないかもしれないが、セックスにおいては性感帯という重要な役割を担っている。
では、会陰はどうだろうか。会陰とは、陰嚢と肛門の間のゾーンのこと。俗にいう、「蟻の門渡り」と呼ばれている部分のことだ。女性の場合は、膣と肛門の間にあり、肛門の雑菌が性器に入らないためのアクセントになったり、また出産時にも重要な役割を果たすという。一方で、男性の会陰はどうだろう。尾てい骨や親知らずのように、あってもなくてもいい存在なのだろうか。
確かに、オナニーでは会陰よりもペニスに夢中になるものだし、セックスでも女性が夢中になるのはペニスか、せいぜい陰嚢くらいのものである。よって、会陰を刺激したり刺激されたりといった経験がある男性は多くないだろう。しかし、実は会陰も、男性の乳首や女性のクリトリスのように、偉大なる副産物なのである。
会陰は、適度な刺激を加えることで充分な快感が得られる、立派な性感帯である。オナニー時には必ず会陰を刺激するという愛好家も存在するほどだ。愛好家いわく、会陰オナニーをするようになってから、心なしか精力もアップした気がするとのこと。このように、いいことずくめの会陰オナニーとは、いったいどのようなものなのだろうか。
<STEP1>
ムラムラした気分になると、すぐさまペニスを握りたくなるのが男の性! しかし、あえてペニスは握らず、会陰を愛撫することから始めるのがポイントだ。陰嚢側よりも、肛門に近いゾーンのほうが良いらしい。ぐいぐい強く押さずとも、指の腹で撫でる程度で可とのこと。ペニスを握らずとも、会陰刺激だけで完全勃起状態に導くことも可能らしい。体勢は、特に指定はないようだが、手コキオナニーよりも時間がかかることが想定されるので、ベッドの上などラクな姿勢をオススメする。
<STEP2>
ペニスが完全勃起しても、会陰だけでオーガズムに達しようとせず、ペニスにも刺激を加え始める。愛好家によると、会陰だけで射精に到達するのは、よほど熟練した者でない限り難しいとのこと。よって、会陰だけでオーガズムを得ようとすると、徐々に無理が生じ、せっかく完全勃起したペニスも萎えるという。意地を張らずに、ペニスの力も借りるべし。ただし、ペニスばかりに夢中になると、会陰オナニーではなくなってしまう。ペニスに没頭しすぎて、会陰刺激も忘れては意味がない。
<STEP3>
射精が近付いてきた頃に、会陰刺激の指にも力を込める。バリエーションとして、コーヒー缶やスプレー缶を股に挟む方法もあるようだ。
オーガズムの感覚としては、アナニーで得るドライオーガズムにも似た多幸感が得られるという。と言っても、アナニーを経験したことがない人にはピンとこないであろう。そう、これもポイントの一つ。「前立腺刺激に興味はあるが、アナルへ指を挿れることに抵抗がある」という男性に会陰オナニーは人気がある。会陰を刺激することで、間接的にではあるが、前立腺へ快感が伝わっていくような感覚になるという。
会陰の快感に慣れると、電車や職場で椅子に腰かけているだけでも快感の波が押し寄せてくるという。だからといって、仕事に支障が出るほどの違和感ではなく、ごくわずかな快感が続くため、「帰宅したらオナニーしよう!」「フーゾクに寄って帰ろう!」と、性欲旺盛になる効果もあるという。オナニーやセックスを面倒に感じる草食男性のリハビリにはピッタリだ。
また、会陰はオナニーだけでなく、セックス時女性に刺激してもらうのも一興。アナル舐めに抵抗を持つ女性でも、会陰なら快く舐めてくれる可能性も高い。なお、会陰舐めをリクエストする際は、「会陰」という言葉を出すとマニア性が強く出てしまうので、ペニスや陰嚢を舐めてもらっている状態で、「もう少し奥」「もっと後ろのほう」と、さりげなく誘導するのが無難である。
(文=菊池 美佳子)