ひと昔前までの日本は、「普通」であることが美徳とされてきた。普通に学校を卒業して、普通に就職して、普通に結婚して、普通に子どもが産まれて、普通にマイカー・マイホームを買って……。しかし人々の生き方が多様化している昨今、普通であることに固執する人は徐々に減り、現代は各々の人生設計が多様化している時代である、といっていいだろう。いや、人生設計のみならず、様々な物事が多様化してきているのではないだろうか。そして、だからこそ目安となる「普通」「基準」が改めて見直されるシーンも多々ある。
だが、物事の「普通」「基準」を決めるのは、意外と難しいものだ。「普通」「基準」を決めるべくアンケート調査を行なって平均値を出すこともあるが、正確に測定した結果ならともかく、自己申告をベースにしたアンケート調査は信憑性が疑わしいこともある。例えば、セックスの平均時間に関する平均値。セックスを題材にした雑誌などの特集で、一般的なカップルの平均挿入時間は何分かということがグラフ化されているものを見かけるが、いまひとつ腑に落ちない気分になるのは筆者だけではないはずだ。
なぜならセックスは、言うまでもなく相手がいてこそ成り立つ行為である。にもかかわらず、挿入の前後に時計をチェックする余裕が、アンケートをとれるほど万人にあるものなのか実に疑わしい。壁掛け時計があるならまだしも、現代人は携帯電話を時計代わりにしているので、壁掛け時計が無い部屋も珍しくないはずだ。
だが、オナニーの場合は別である。オナニーは、セックスと違って1人でも成り立つ行為だ。気を遣う相手もおらず、己の快楽にのみ集中できるので、前後の時間をチェックする余裕は充分にあるはずだ。
さて、一般男女は、オナニーにどれくらいの時間をかけているのだろうか? まずは一般男性を対象に意見を募ったところ、「セックスよりも早い気がする」という男性が圧倒的多数だった。当然だろう。セックス相手がどんなに愛する恋人であろうと絶世の美女であろうと、自分のカラダは自分が一番わかっている。膣から受ける刺激よりも、自分の手のほうが握力調整しやすいため、セックスよりも早く射精に達するというのは頷ける。もちろん、女性が悪いという意味ではない。女性とのセックスが気持ち良いものであるからこそ、すぐに射精してしまうのがもったいないという思いから、セックスではあえて時間をかけるようにすることもあるはずだ。
ここからは具体的時間について。多かったのが「1分以上10分未満」という声。補足すると「オカズが確定している場合」に限る。動画でもグラビアでも、即抜きアイテムが手元にあれば時間はかからないとのことだった。
では、オカズが確定していない場合はどうなるのか? ケータイないしパソコンで自分の嗜好に合ったオカズを探し始めてから射精完了までの時間は、なんと最長で4時間かかったという人もいた。自分好みのオカズがすぐに見つかる時もあれば、なかなか見つからずオカズ難民となり、悶々としたままネットサーフィンを続けることになるようだ。
時間がかかるといえば、アナニー派や床オナニー派も然り。アナルを刺激するアナニーは、前立腺の位置を探すのに毎回苦戦する・指1本挿れるまでほぐしたり心の準備をするのに時間を費やすようだ。布団の上でうつ伏せになり股間全体を擦りつけるように腰を動かす床オナニーは、ペニスに受ける刺激が比較的軽度なため、30分程度の時間を要するのはやむを得ないと床オナニスト男性は語る。
女性たちはどうだろう? イメージ的には、射精がないぶん、延々と貪り続けているイメージだが、早い人は「2分~6分」とのことだった。これまた男性同様に、オカズが確定している場合は早いようだ。なお、レディースコミックや官能小説よりも「妄想派」が多いことが特徴的だった。さらに、「早くイキたい際は電動マッサージャーを使用する」という、文明の利器を活用するタイプも。
平均的には、女性の場合はだいたい30分未満で終わるようだ。男性のように、嗜好に合うオカズを求め続けて何時間もネットサーフィンする人はいなかった。女性のほうが合理的ということか、いや男性はオナニーにもこだわりが強いのかもしれない。
繰り返すようだが、オナニーは1人でも成り立つ行為なので、数十秒で終わろうと数時間かかろうと、誰に迷惑がかかるわけではない。現代人は時間に追われて生きている感もある昨今、オナニーくらいはマイペースで楽しんでみてはいかがだろうか。
(文=菊池 美佳子)