「NTR」という造語をご存知だろうか? エロゲーやアダルト系のアニメを嗜む人なら一度は耳にしたことがあるはずだ。「寝(N)取(T)られ(R)」の頭文字を連ねたもので、主人公が、ヒロインを寝取られるというゲーム上の展開のことである。美男子に寝取られ嫉妬に苦しむ和姦パターンもあれば、キモオヤジに寝取られる強姦パターンもあり、ヒロインも、清純な処女キャラだったり、淫乱なセクシータイプだったり、実にバリエーション豊か。
そういったストーリーに不快感を示す人もいるが、性的興奮を見出す人もいる。それも、決して少数ではない。確かに、古代ギリシャ神話や源氏物語にも寝取られシーンは多数存在するので、NTR願望を持つ人が多いというのもうなずける。
具体的には、どのような点に性的興奮が生じるのだろうか?
まずはM気質タイプ。「自分のカノジョや妻が、自分よりも性的に逞しい男性に寝取られる」というシチュエーションに萌えるようだ。こちらは、自分主体である。
その逆で、S気質タイプも存在する。「自分を慕うカノジョや妻に辱めを与えて満足する」とのこと。こちらは、相手女性主体といえるだろう。
ほか、変わりどころでは、自分のカノジョや妻の肉体やセックステクニックを、第三者に見せつけたいという人もいた。さぞ、ご自慢のパートナーなのだろう。
なお、NTR性癖は、エロゲーやアダルトアニメの中だけでなく、三次元の世界にも存在する。NTRプレイの経験があるという、中国地方在住の夫婦に話を聞いてみた。
元々、SMプレイやハメ撮り投稿など、それなりにハードなセックスも楽しんでいたというが、妻がなかなか首を縦に振らなかったのがNTRプレイだった。対する夫は、どうしても妻が他の男性に抱かれる姿が見たくて、夫婦で行きつけのアダルトショップ店経営者に協力を求めたという。夫は、プレイへの立ち合い希望だったが、協力者からNGが出たため、後日撮影写真を受け取るという約束で席を外した。なるほど、必ずしもパートナーが第三者とセックスしている姿を見なければ興奮しないというわけではなく、「寝取られた」という事実があるだけでも十分に興奮を得られるようだ。
妻側の心境は如何なものか? この夫婦の場合は、この一回がきっかけになり、妻側もNTRプレイに積極性を見せるようになったという。きっかけは、数年前の夫の浮気がフラッシュバックしたとのこと。夫の浮気相手は、複数プレイや乱交にも応じる女性だったので、負けられないという思いが芽生えたのかもしれない。
夫婦の心境もさることながら、協力者男性の胸の内も気になるところ。この夫婦に巻き込まれたアダルトショップ経営者は、ペニスに真珠を入れているような、セックスに開放的なタイプだったので二つ返事でOKしたようだが、一般男性の場合はそうもいかないだろう。「うちの妻(カノジョ)とセックスしてほしい」と言われて、「ラッキー」と素直に悦ぶ男性はごく少数なのではないだろうか。
なお、女性側がNTR願望を持っているケースもある。つまり、自分の彼氏や夫が、ほかの女性とセックスすることで興奮を得るという。とはいえ、浮気を公認しているわけではない。これは、NTR願望を持つ男性からも同じ意見が挙がっているのだが、「自分に隠れてコソコソ浮気されるのは不快」とのこと。立ち合いがアリでもナシでも、とにかく自分の目の届く範囲で! というのが大前提のようだ。
カノジョや妻からNTR願望を打ち明けられると、やはり大抵の男性は困惑すると答える。「カノジョや妻公認で、他の女性とセックスが出来る!」と手放しで悦ぶ気分にはなれず、複雑な心境に陥るとのことだった。
先に挙げた夫婦のように、お互いが寝取られプレイに興奮することが出来て、プライベートには立ち入らない協力者を見つけることが出来れば、第三者がとやかく言う必要はないだろう。しかし、「あかの他人とはセックスしたくない」と言っているパートナーに、自分の願望を押しつけるのは、言うまでもなくNG。とはいえ、「どうせ受け入れてもらえないに決まっている!」と決めつけず、それとなく提案してみる価値は大いにある。パートナーも、同じ願望を抱えている可能性もゼロではないのだから。
(文=菊池 美佳子)