パソコンの普及・浸透により、文字を書くことが少なくなったと痛感させられる。パソコンは、非常に便利なアイテムではあるが、手書きが少なくなったデメリットとしては、やはりなんといっても「漢字が書けない現代人」が増えたことだろう。パソコンは、変換キーを押すと一瞬で漢字が表示される。読みが同じ漢字がいくつかあったとしても、横に用途や例文も表示されるので迷うことはない。そのため、「漢字を読むことは出来るが、書けと言われたら自信がない」という人も多いようだ。そういえば、残暑見舞いや年賀状を書く人も年々減ってきている。これまた、携帯電話の普及によって、「メールで充分」という考え方が主流になってきているようだ。
このように、すっかり手書き離れしてしまった現代人であるが、性の世界では「落書きプレイ」が、今も昔も変わらず、愛好家の支持を集めている。
落書きプレイとは、女性(まれに男性の場合もあり)の裸体に、口紅やマジックを使って、卑猥な言葉やマークを書く行為のこと。アダルトビデオや投稿雑誌で見かけたことがあるだろう。
落書きプレイは、なんといっても「物のように扱う」ことに、その醍醐味があるという。確かに、落書きとは本来、ノートなど「物」に対して行なうものである。それを人体に施すことで、書く側も書かれる側も興奮が得られるという。そういえばSMでは、時にS側がM側を椅子などに見立てて物扱いするプレイを行なうことがあるが、落書きプレイはその応用編といったところか。
なお、女体に落書きすることでは、射精に至ることはないとのこと。当然だろう、ペニスには何の刺激も加わらないのだから。では、何のために落書きを施すのかというと、どうやら「撮影」の楽しみがあるらしい。雑誌に投稿するための静止画を撮影したり、雑誌投稿とまではいかなくても、ケータイのカメラ機能で撮影し、個人的に鑑賞するだけでも充分楽しめるという。
物扱い・撮影以外にも、全く別の楽しみ方もある。洋服で隠れる部分(バストや腹部、太ももなど)に落書きを施し、そのままの状態で日常生活を過ごすというやり方だ。そのことによって、仕事や家事をしていても、意識は常に落書きを施された部分に集中するので、エロティックな気分が継続する。仕事の合間にトイレでこっそりと下着をずらし、落書きされた部位を見ると、さらに興奮は高まる。このやり方なら、パートナーがいない人でも、単独で実践することが可能である。
ところで、落書きプレイで書かれているのは、どのような文字が主流なのだろうか? 街で見かけるのは、「○○族参上!」など地元の不良グループの権力誇示的なフレーズや、観光地の公衆便所では相合傘に男女の名前を刻んだ記念的な落書きも見かけるが、落書きプレイの場合は全くニュアンスが違ってくる。「牝豚」「家畜」だったり、性器付近に矢印マークを書き、「挿れて」というセリフやペニスの絵を書くという。なお、落書きされる女性が美人の場合は、「牝豚」「家畜」という文言よりも、おのずと「淫乱」「好色」など、容姿とは関係ない言葉が多くなると語ってくれた愛好家も。
次の疑問は、文字は何で書いているのかという点。多かったのが、口紅・眉ペン・アイライナーなど、化粧品を使っているという声。女性目線では少々もったいない気もするが、百円ショップでも売られているような安価なもので十分とのことだった。アダルトビデオや投稿雑誌ではマジックで書かれている作品が多いが、愛好家女性によると、「油性マジックは肌が荒れることもある」という。敏感肌の人は充分にご注意頂きたい。ほか、通販で手に入るタトゥシールに、パソコンで作った文字をプリントアウトして貼っているというデジタル派も存在する。いやはや、落書きプレイにもパソコン化の波が押し寄せてきているようだ。
そして、落書きプレイに向いている肌質や体型だが、やはりガングロ系よりも色白系のほうが映えるようだ。最近の美白ブームは、落書きプレイ愛好家にとっては好都合な現象といえる。また、あまりにもふくよかな体型だと、腹の段にペン先が引っかかることもあるとのこと。これまた、最近のダイエットブームは、愛好家にとっては好都合であろう。
コストもかからず、様々な楽しみ方の出来る落書きプレイ……双方合意のうえなら何の問題もない。但し、漢字の書き間違えがあると、せっかくのエロティックなムードも、いっきにギャグモードになってしまい、S側の面目は丸つぶれである。そう思うと、日頃から手書きに慣れておくべきだろう。
(文=菊池 美佳子)