“痴女遭遇”武勇伝に登場する女性の共通点

chijo0708.jpg※イメージ画像:DVD『僕の上司は痴女』より

 自慢話が好きな人というのは、どの集団にも存在する。そして、自慢話には2パターンあるようで、1つは幸せ自慢、そしてもう1つは不幸自慢である。前者の心理は分からなくもないのだが、理解に苦しむのが後者の方である。「自分は、こんな不幸を乗り越えてきたのだ!」と猛烈アピールし、「すごいね」と言われることで満足を得ているということなのだろうか。今回は、そういった不幸自慢の中から、痴女被害自慢に注目してみよう。

 一般的に、痴漢被害に遭いやすいのは、女性の方が圧倒的に多い。男性が遭遇する危険性があるのは、痴漢被害よりも、むしろ冤罪被害のほうだろう。近年、痴漢行為を撲滅しようという動きが社会的に高まる一方で、犯人でない男性が告発され、無実の罪を着せられるという事件も目立ってきた。

 痴漢冤罪の背景として考えられるのは、身動きがとれない満員電車の中で、不可抗力や過失によって女性の体に触れてしまい、それを痴漢行為と解釈されてしまうというのが原因であろう。こういった、触った・触っていないトラブルにうっかり巻き込まれてしまうと、職場や家庭での信頼などを失うはめになってしまう。そう考えると、通勤電車というものは、男性にとっては一時たりとも気を抜けない、非常に居心地の悪い空間と言えるだろう。

 そのため、通勤に電車を利用する男性たちは、冤罪予防として様々な策を凝らしている。最も多いのが、「吊り革は両手で摑まる!」という意見。これなら、両手がふさがっているのだから、痴漢に間違われる可能性はゼロ! と言いたいところだが、下半身が当たってしまい、痴漢と見なされることもある。それならば、「両手で本を持ち、読書!」という人もいるが、今度は肘がバストにあたってしまうという問題が出てくる。挙句の果てには、カバンや傘があたっただけでもNG! ということもあり、もはや最終手段は「女性の傍には寄らない!」くらいしか予防策が考えられないのが現状だ。数年前には、男のグー手袋(内部に、指を曲げたまま動けなくする合成樹脂が装着されている手袋。手が、拳を握った状態になるので、平手で痴漢行為をすることが不可能)といった商品も登場したが、暑い夏に手袋、というのも不自然である。

 このように、冤罪予防に神経を擦り減らす毎日では、ストレスが溜まってしまう、という気持ちはよく分かる。「最低限のマナーとしてやっているだけで、負担には感じない」という人も、自分では気付かないところでストレスを溜め込んでいるということもあるだろう。

 そういった、冤罪予防ストレスを抱える男性が少なくないなか、「俺はむしろ触られる側の人間だ!」と、痴女被害に遭ったことを武勇伝のように語る男性も存在する。彼らは、「背中に胸を押しつけられた」「尻を撫で回された」「股間を弄られた」などの痴女被害を、なぜか皆嬉しそうな表情で吹聴するのだ。尚、彼らの話に登場する痴女たちは、巨乳だったり、妙齢のセクシーな女性ばかり。サエない醜女や小太りの熟女に触られたという話は聞いたことがない。

 「俺は痴女がほっとかないほど魅力的なオトコなんだぜ!」ということを遠回しにアピールしたいのかもしれないが、聞かされる女性側の評判はすこぶる思わしくない。「作り話? と疑いたくなる!」「触られる隙があった自分を、男として恥じるべき!」「何の自慢だ! とツッコミを入れたくなる」など、だいぶ辛口な意見が挙がった。稀に、男性(同性)に触られた話を持ち出し、「いや~、俺ってホモに好かれるみたいだな~」と、謎の持論を展開する人もいるが、生粋のゲイ男性に聞いたところ、「ノンケ男性をどうにかしようと考えている同性愛者は滅多に存在しない。わざわざ痴漢などしなくても、同じ嗜好の相手を見つける場はいくらでもあるのだから」と、やや憤慨気味に打ち明けてくれた。

 以上を踏まえると、痴女に遭遇した話が作り話だろうと実話だろうと、人前で雄弁に語るのは避けたほうが無難といえる。いや、サエない醜女や小太りの熟女に触られたという笑い話だったら盛り上がるかもしれない。
(文=菊池 美佳子)

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