フランスの巨匠監督が東京で大乱交パーティーを撮影!! その野望に迫る

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 東洋の果て、東京に流れ着いたオスカーとリンダの兄妹。不幸な両親の事故で離れ離れになった二人がようやく安住の地を見つけたのも束の間、ヤクの売人であるオスカーは、商売で訪れたバー”VOID”で警察のガサ入れに遭い、その際に誤って警官に射殺されてしまう。肉体を離れたオスカーの魂は、欲望渦巻く東京の街をさまよいながら、愛する妹の痴態、更には自らの忌まわしい過去の出来事の数々を行き来しつつ、無(=VOID)の世界を経て、新たな転生へと向かっていく……。

 『カルネ』(1991)で異常な父娘愛を描いてカンヌ映画祭を大いに沸かせ、『アレックス』(02)では映画史上最も過激と言われたレイプシーンで、同映画祭の上映時には直視出来ずに大量の途中退場者を出すなど、新作を発表する度にその過激さで話題を呼ぶ男、ギャスパー・ノエ。

 そんなノエが久々に撮った最新作『エンター・ザ・ボイド』の舞台は上記の通り東京!! 肉欲のるつぼと化した歌舞伎町を舞台に、『アバター』(09)も手がけたVFXチームによる幻想的なビジュアルで、生と死、SEXにまみれた大都市の姿を描いた問題作だ。

 そんな問題作を撮ったノエ監督を直撃!! 過激なフィルモグラフィーを持つ監督に、いろいろツッ込んでみました!!

etv_noe.jpgお茶目なノエ監督


――前作『アレックス』から今回の『エンター・ザ・ボイド』の公開まで、7年の年月が経過してたわけですが、7年かかった理由っていうのは何なんでしょう? やはり『アレックス』の過激さが叩かれて撮る機会がなかったとか?

ノエ 別に『アレックス』が不評だったからというわけじゃなくて、スタッフの調達とか、製作費の工面があって7年かかったんだ。それに僕はあくせくと働き続ける人間じゃないから、休養を取りたかったというのもあったしね。まあカナダでも撮影したりとか、いろいろな解決しなければならない問題が沢山あったので、撮影自体も3年くらいかかったね。それからまたポストプロダクションに3年半位かかって、カンヌ映画祭に出品した作品も最終版ではなく、ようやく完成したのが今年の1月だったんだ。ただ『アレックス』の時は1年ほどで撮ったし、次回作もそれくらいの速さで撮るつもりだよ。

――なぜ、今回の舞台に東京を選んだのですか?

ノエ 『ブレードランナー』(82)とか『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)とか『2046』(04)みたいな、どこか未来的な側面を持った街を選びたいという理由で東京にしたんだけど、上海や香港、ラスベガスも候補だったんだ。ただ、上海や香港はよく分からなかったし、ラスベガスで撮影するにはエネルギーが要る上に、あっちはスタッフの組合が強くて、仕事をするには規制もあったから。日本には何度も来たことがあるし、知り合いもいて楽な撮影だったんだけど、プロデューサーを説得するのは大変だったね。

――東京もそうですし、先ほど候補に挙がった上海やラスベガスもそうなんですけども、ネオンが結構きらびやかな街が多いじゃないですか。これは、作中のドラッグのトリップのシーンと重なった部分というのが大きいんですか?

ノエ 例えばトリップのイメージって、メキシコなんかでよく描かれてるマジックマッシュルームを服用した時なんかの絵とか、映画の『TRON』(82)なんかに出てくるCGみたいな感じだってよく言われるんだけど、そういうのに相応しい街はないかな、と探した時に、先程挙げた街が思い浮かんだんだ。それと、サイケデリックで色彩豊かな色の洪水のようなイメージは未来的な都市に凄くマッチすると思って使ったんだけど、その辺は僕の大好きな『2001年宇宙の旅』(68)のクライマックスで、ボーマン船長がスターゲートに突入した際に色彩の洪水みたいになる場面があって、アレに匹敵する映画を作りたいという、そういう野望も込めているんだよ。

――実際にあのトリップシーンは『2001年~』彷彿とさせるものでしたが、キューブリックはお好きなんですか?

ノエ 確かにキューブリックの影響は大きくて、自分が最初に『2001年』を見たのは6歳の時だったんだけど、それから何度も何度も毎年のように見直してる映画だよ。まあ6歳の子供にあの映画が理解できる訳もないんだけどね(笑)。理解しないながらも何か凄いモノがあると思いながら見てたし、そういう意味ではキューブリックへのオマージュを捧げたつもりではないんだけど、どこかでそういう意識があったかもしれないね。キューブリックとマーティン・スコセッシ、ラース・フォン・トリアーはとても会ってみたい監督だけど、キューブリックにはもう会えないのが残念だよ。あ、でもデヴィッド・クローネンバーグ監督には会ったな。クローネンバーグはとても偉大で、偉大な監督っていうのは基本的にいい人だね(笑)。あと、宮崎駿監督も尊敬していて、全然違うジャンルなんだけど、とても偉大な監督だと思うよ。

――最後の質問になりますが、本作のSEXシーンを見ていると、欧米的なアッケラカンとしたものではなく、日本のAV的なネットリとしたいやらしさを感じたんですが、やはり日本が舞台という事で、日本のAVとかを見て研究した部分があるのですか?

ノエ 特に日本のポルノとかAVを見たわけじゃないけど、舞台になったラブホテルに関してはそういう写真集があったので参考にして、もっとサイケデリックな感じにしてホテルのセットを組んでみたんだ。それに、クライマックスのSEXシーンはボーナストラック的なもので、お楽しみが増えるだけといった感じであまり興奮しないとは思うけど、まあオマケだから(笑)。で、そのポルノグラフィックなシーンなんだけど、本業のポルノ俳優から素人まで出てくれて、本当に(SEXを)している人もいるし、擬似でやってる人なんかもいるんだけど、驚いたのは75歳と72歳のカップルが出てくれたんだよ!! 非常にイキイキと楽しんでくれて、女性の方が72歳だったんだけど、非常に美しい肉体の持ち主だったね。そんな歳でも楽しめるというのは人生の一つの素晴らしさかなと思ったけどね。

 監督はこう語って謙遜するものの、クライマックスの一大SEX絵巻はメンズサイゾー読者なら大満足間違いナシな過激シーンのオンパレード!! まさに生(性)と死のイメージが入り交じり、最後まで興奮度フルスロットルなビジュアルが堪能できる本作。映画史に残るであろうこの”事件”を、是非とも劇場で目撃していただきたい!!
(撮影=有高唯之、取材・文=テリー天野)

■ギャスパー・ノエ
1963年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。13歳でフランスに移住し、91年にデビュー作の『カルネ』でカンヌ映画祭国際批評家賞を受賞。アニエスb.の資金援助により『カノン』(98)を撮り、02年の『アレックス』では、レイプシーンの過激さ故に、カンヌ映画祭での上映時には約200人の観客が途中退席するなど、常に過激でセンセーショナルな作品で話題を呼んでいる。

■映画『エンター・ザ・ボイド
TOKYOの片隅で身を寄せ合うオスカーとリンダの兄妹。ドラッグの売人であるオスカーは、バー「VOID」で警察に射殺されるが、その魂は愛する妹を求めて彷徨い続け、過去の忌まわしき記憶と妹の痴態を目の当たりにしていく……。
監督・脚本/ギャスパー・ノエ
VFX/ピエール・ブファン
出演/ナサニエル・ブラウンほか
配給/コムストック・グループ
公開/5月15日より、シネマスクエアとうきゅうほか
(c) 2010 FIDELITE FILMS – WILD BUNCH – LES FILM DE LA ZONE – ESSENTIAL FILMPRODUKTION – BIM DISTRIBUZIONE – BUF COMPAGNIE

 

アレックス

 
10分にも及ぶレイプシーンは圧巻

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