「2次元」ブームとともに世を席巻し、いまや「オタク系趣味」の代名詞ともなっている、アニメやゲームのフィギュア。パンチラや乳首浮きなどが再現されている高露出度のものも多く、「オカズ」として利用しているファンも少なくない。
しかしながら、地上波アニメで局部や乳首を露出したシーンが放映されることはない(少なくとも、00年代以降は)のと同じ理由から、全裸のフィギュアが大手メーカーから販売されることはない。そこで、お気に入りキャラとの「さらなる密な関係」を結びたい一部のファンたちが手を出すのが、「魔改造」と呼ばれる加工により、乳首や局部が再現されたフィギュアである。
秋葉原のごく一部の専門店でも秘密裏に「魔改造品」を扱っているとはいえ、その流通のほとんどはインターネット上にある。このたび、テレビや雑誌の情報ではいまひとつつかみにくい魔改造の世界の実情に迫るため、魔改造請負業者のひとつである「春木屋」を主宰する男性に話を聞いた。
──月に何件程度、「魔改造」を請け負うっているのですか?
純粋に魔改造作品に限った依頼件数は、月に平均しても5体あるかどうかといったところです。
──「魔改造」フィギュアに対する当局の規制はあるのでしょうか。
特に魔改造ということで当局から規制や、指導といったことは私の知る限りなかったと思いますが、サイトもアダルトカテゴリにしたり、その旨注意書きも行うなど、通常アダルト関係を扱うサイトと同様の対策、対応を自主的にしています。
──もともとの状態でもかなり露出度の高いフィギュアもありますが、どのようなフィギュアが「魔改造」を施しやすいのでしょう?
作業性の問題だけでいえば、最初から露出度の高い(特に下着さえつけていないような)フィギュアの方が魔改造はしやすいです。ただ、魔改造の醍醐味は変化へのインパクトであり、その変化が大きければ大きいほど魔改造作品としての魅力もUPしていきます。ですので大きな変化が期待出来るフィギュアほどやりやすいともいえます。
──局部や乳首を造形するにあたっての、ポイントやテクニックは?
水着等ではない衣服を剥ぎ取って全裸にする場合や大掛かりなポーズ変更などの改造を行う場合、ほとんどフィギュア原型を製作するのと同じスキルが必要とされるので、それなりの造型経験が必要だと思います。それを踏まえたうえでポイントとなるのはラインの見極め。首から鎖骨、更に胸、腰、ヒップへの連続した流れをイメージできるかどうかで仕上がりに差が出てきます。
乳首や局部の表現等も二次元キャラの立体物とはいえども、デフォルメはするものの、実際の本物を参考にした方がより説得力が出るのではないかと思います。テクニックはいろんな失敗をしてきたり同じ作業の繰り返し中で培われるものなので個人的には特別な事をしている感覚はありません。
──局部や乳首を造形するにあたって、モデルにしているものがあるのですか。
この仕事を始めてからはアダルトビデオを良く見るようになりました。多分人生の中で一番見ている時期なんじゃないかと思います(笑)。
雑誌などの画像だけでも良いような気もしますが、動きがあるほうがラインをつかみ易いですし、いろんな体制での胸の状態は雑誌などの画像だけではつかみにくいのでどうしても迷ったときは動画で確認します。
──男性キャラの「魔改造」という需要はあるのでしょうか。
少年のキャラは数件、製作したことがありますが圧倒的に少ないです。個人的には、こういった男性の魔改造も、もっと普及していけば面白いと思います。
──「魔改造」作品を作る上でのこだわりを教えてください。
作品を仕上げる時に一番大事にしているのはコンセプトです。
シチュエーションや状況等、より萌えるにはどう改造すれば良いかを常に意識して製作しています。また、そういった状況再現の整合性にも気をつけています。
たとえば服を透けさせて乳首をうっすら見えるようにするときなどは、透けるという状況はどういうことかを考えて物理的にありえる状況を再現する様に改造しています。
こういった細かい部分は、時に自己満足に近いこだわりだったりしますが、造型にはそれなりの説得力が必要だと思っています。
──今、一番人気のキャラクターは誰なのでしょう。
非常に難しい質問ですね。
作品自体のキャラ人気などはwebリサーチ等でも発表されているので簡単に知ることが出来ますが、フィギュアの方は必ずしもそれにリンクしているわけではなく、加えて魔改造作品ともなると、いま求められているのはどのキャラか、全くわからないというのが本音です。
今までに数百体魔改造作品を制作してきましたが、「一番人気はこれ」と感じたことは一度もありません。魔改造作品を購入、御依頼される方は個々それぞれの思い入れに従って選択しているのだと思います。それが特定のキャラへの思い入れだったり、とにかく幼女体系なら何でもといったようなフェチ的な思い入れまで、本当に千差万別です。逆にそういった思い入れが強いからこそ当工房にも、ご依頼を頂けたり、購入されているのだと思っています。
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既製品フィギュアの改造を「セカンドアート」と捉え、リアルとデフォルメを両立させることによって高い人気を得ている「春木屋」の魔改造フィギュア。氏の言葉を借りれば、「魔改造の醍醐味は変化へのインパクト」。「着衣のキャラクターを全裸にする」という背徳感とアングラ感が、魔改造ユーザーの楽しみの最たるものなのだろう。
「2.5次元」とも称される独特の造形に、禁じられていた「性の要素」を加える魔改造。いわゆる「萌え系」のアニメ・ゲームに親しんで育った若者たちが増えている昨今、これからもこの魔改造市場は拡大していくのではないだろうか。
レッツトライ♪